「大丈夫か?ハニー先輩?」


「うー……」


問い掛けるに、潤んだ瞳を向ける光邦。
やはり、痛いようだ。


「転んだところをモリ先輩に踏まれちゃったみたいなんですよ、


「ああ……それは痛いな、かなり」


ハルヒの言葉に、腕を組み納得した。
体格のいい崇に踏まれれば、それは結構な重心が掛かるだろうから。


「でも……うん、これくらいなら大丈夫ですよ」


腕に出来た傷口を消毒していくハルヒ。
ドアを治す崇にが視線を向けた。


「大丈夫だってさ、モリ先輩 擦り傷みたいだしな」


「……ああ そうか」


嬉しそうに微笑む崇に、ハルヒもも『お』という表情を浮かべた。
寡黙な崇が見せる笑顔は、何だか珍しくも思えたから。












NotxxxPersist-ence 第四話












「ハルちゃん、ちゃん」


聞こえた可愛らしい声色に、もハルヒもすぐに視線を落とした。
そこには、いつの間にかハルヒの膝に座る光邦の姿があった。



……は、早技っ!



率直な感想がの脳裏をよぎり、その思いが表情として表れていた。


「さっき、珠洲島くんとお話してた?さっき、珠洲島くんが出てくる所見たのー」


「すずしま?誰ですか?それ」


光邦の問い掛けに、キョトンとした表情を浮かべるハルヒ。
けれどは『ああ、喋ってたな』と肯定するように頷いていた。


「二年C組 珠洲島亨先輩 春日崎先輩の許嫁だよ」


「え……ッ!!いいなず────……許嫁ぇっ!?」


答えたのはだった。
簡潔に、学年、クラス、名前を延べ、先の春日崎との関係も暴露した。


「ま……高等部から入学なハルヒが知らないのは仕方ないだろ たぶん、この分だと環先輩も知らないんじゃねーの?」


「多分、タマちゃんも知らないと思うよぉー」


驚くハルヒに微苦笑を浮かべる
肩をすくめ、ハルヒだけじゃないと伝える言葉に光邦が同意した。













紳士のたしなみ レッスン二
"熱き討論が自立精神を養うものなり"


「皆の衆!珠洲島氏と春日姫の確執について言及せよ!」


ばんっ、と写真を部員に見せながら環が言いきった。
話がどんどんダンスパーティーの特訓から逸れていっていた。


「ハルヒ、ドンマイだな 今度俺で良かったら、練習に付き合ってやるよ」


「……ありがとう、


聞くだけ無駄だと分かっていた所為か、小さく呟いたハルヒの声にが反応した。
隣で苦笑を浮かべつつも、憐れんだ視線を送るにハルヒはお礼を口にした。


「では、まずは常陸院ブラザーズ!」


ビシッ!!

指を差され指名された光と馨は、書類と虫眼鏡を持ち「はっ!」と元気よく返事をした。


「探偵でもやってるみたいだな……」


「本当にね……」


溜め息混じりのの言葉に、ハルヒも同意するように溜め息混じりに反した。


「「二人は幼馴染!婚約は両親による決めごとのようであります!」」


ビシッと背筋を伸ばし報告する光と馨。
どこかその表情に、楽しげなものが浮かんでいるようにには見えた。



格好の玩具でも見つけた……って感じだな、おい



ははは、と呆れた笑みを浮かべた。
ガタと音をたてて椅子から立ち上がった鏡夜に、の意識もまた戻っていく。


「鏡夜、珠洲島氏についてのレポート!」


「ああ」


まるで茶番に付き合っているかのような返事をする鏡夜。
けれど、調べる事はきちんと調べるのかレポートに視線を落とすと、鏡夜は中指の腹で眼鏡のフレームを軽く押し上げた。


「成績優秀 家柄まあまあ 容姿人並み いわゆる『C組』だな
 真面目さが取り柄で、来春からは英国留学が決まっている」


家柄、成績順にクラスが分けられる桜蘭。
珠洲島がC組と言う事は、家柄が追いついてきていない────という事なのか。


「難を上げるなら……」


「「影が薄い 気が弱い」」


「つまり、『地味』だ」


呟く鏡夜の言葉に答えるように、光と馨が答えた。
そして、それをまとめるかのように鏡夜が再度呟く。

その言葉は、本当に容赦ない。


「大体筋は通るな」


「は?」


顎に手を当て呟く環に、ハルヒがキョトンとした。
まるで"何の筋が通るんですか"と言いたげな。


「春日崎先輩の病気の理由だよ」


分からないハルヒに、簡潔にがそう告げた。
その言葉を受け継ぐかのように、鏡夜が口を開いた。


「"将来、あんな冴えない男と一緒になるなんて愚の極み"」


「"せめて今のうち、好きに遊んでおきたい"
 普通に見れば、そーゆー流れなワケ」


続けられた光の言葉に、納得出来なさそうなハルヒ。


「ふうん……そうなんですかねぇ……」


そんな風に相槌を打つだけだった。


「鏡夜……どーせお前も知ってたんだろう、許嫁の件」


「お客様の事を調べるのは当然だろう」


溜め息混じりの環の言葉に、いけしゃあしゃあと笑顔で鏡夜は答えた。
手に持っているのは、顧客データと書かれたファイルだった。



部活のはずなのに……すげぇ、営業してるみたいだな



ははは、と乾いた笑みが幽かにから零れた。


「特に利用価値もない情報だから放っといたんだよ」


「ぼくは春日ちゃんとおうちが近いからー」


はどうなんだ?」


答える鏡夜と光邦、環は知っていたようなにも話を振ってきた。


「んあ?」


「春日姫と珠洲島氏が許嫁だって話の事だ」


「ああ……うちの稼業の事忘れたか?環先輩?」


面倒臭そうには答えた。
それは環の問い掛けへの答えにはなっていなかったが、結果的には答えになるものでもあった。


「……ああ、確か探偵事務所だったな なるほど」


ようやく納得したらしい環に、は「バーカ」と悪態をついた。
肩をすくめ、は光と馨と一緒に居るハルヒの元へ近寄った。


「でさ、ハルヒ ダンスの方はどうすんだ?」


「今日練習してれば順調だったんだってさー」


笑いながらハルヒの代わりに答えたのは光だった。


「まぁ、なんとかなるだろ それよりさ……」


あっけらかんと、なんとかなる発言をする馨。
そして、接続詞となる言葉を紡いだ瞬間、光と馨がハルヒの顔に近づいた。


「ここで問題です」


耳元でつぶやく馨。


「『珠洲島』の名でネット検索すると、出てくるのはなーんだ?」


ハルヒの頬に手を添える光。


「…………」


その様子を見ていると、何だかモヤモヤとしてくる心の中。
無性に腹立たしくて、どこか寂しくて悲しくて。


?」


無言のまま立ち尽くすに気づいた馨が、首を傾げた。
けれどは何も返さない。

まるで時間が止まってしまったかのように、光とハルヒを見つめていた。










to be continued..............




馨夢なのに光夢っぽくなってしまった!!
ややややや、ヤバイ!!\(゜ロ\)(/ロ゜)/






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