どうやったら、この溝を埋められるんだろうな……







NotxxxPersist-ence 第四十五話







「辛かったねぇ、ちゃん」


「ハニー先輩……いや、そんな事ねぇよ」


背伸びをして、の頭を撫でてくれる光邦。
そんな光邦に一瞬きょとんとした視線を向け、すぐには微笑んだ。
確かに辛かった事も多かった。

でも。


「俺には……みんなが居てくれたからな
 ここに入部させられた時は『とんでもない事に巻き込まれた』って思ったけど
 でも、この出会いはいいものだったからな」


ひょんな出来事から、入部をさせられてしまう事になった。
初めは嫌な気分でいっぱいだったけれど、それでも徐々に慣れて、楽しくて。

こんな毎日がずっと続けばいいと思えた。


「俺、凄い幸せ者だ」


……」


の言葉に、全員が嬉しそうな笑顔を浮かべた。
そして、馨が名前を口にするとギュッと抱き寄せた。


「かかっ、馨!?」


「……あのさ、


「な、なんだよ?」


耳元で聞こえる囁く声。
ドキドキと胸を高鳴らせながら、も馨の背中に腕を回して抱きついた。


「……学校卒業したら……」


「うん?」


「僕と結婚しない?」


その言葉に、一瞬その場に居る全員が固まった。
こんな、いきなりなプロポーズなんてない。


「え、えぇぇぇぇっ!?ちょ、馨!?何いきなり……」


「いきなりかもしれないけど、僕は本気だよ?」


「本気じゃなかったら怒るっつーの」


驚くだけれど、本音を言えば嬉しい気持ちでいっぱいだった。
そして、それが本気だという事ももちろん分かっていた。


「……俺でよければ、俺も馨と結婚したい」


まだまだ先の話だ。
それでも、はずっと馨と居たいと思えるほどに好きになっていた。
いつも支えてくれていたのは馨だった。
いつもそばにいてくれたのは馨だった。

馨といれば、どんな辛い事があっても──きっと乗り越えて行ける。


「おっ、お前ら!!!」


目の前でそんなプロポーズを聞く事になるとは思わなかった環は、驚きの声を上げずにはいられなかった。
もちろん、その場に居た部員全員もぽかんとしてしまっている。

そんな様子を見ながら、と馨は抱き合うのを止めて距離を開けると。


「あっれー?殿、もしかして先越されるのがそんなに嫌?」


くすくすと笑いながら、馨がそんな風に問いかける。



ハルヒとじゃ、なかなか進展しなさそうだもんなぁ……



すぐにくっ付く──なんて雰囲気はまるで感じさせない。
むしろ、遠のいているような気がしていた。

ハルヒは環をうざがっているし、環もハルヒへの恋心に気付いていない。


「まだまだ先だなぁ……」


想像したら、なんだかなかなかくっ付かなそうで苦笑が零れた。


「おおおおお、お前らぁぁぁぁっ」


「ちゃんと、式上げる時には呼ぶからな
 ハルヒ、俺の投げるブーケ、絶対受け取れよ?」


涙目で叫ぶ環に肩を竦め、軽く受け流す
くるりと視線をハルヒに向けると、そんな事を呟いた。



お?
今、ウエディング姿のハルヒの事を想像したな?



真っ赤になる環を見れば、そう想像するのは容易かった。
苦笑を浮かべ、真っ赤になる環の様子をは観察し。


「なんで自分?」


「え?だって、この中で女っつったらハルヒしかいねぇじゃん?」


不思議そうなハルヒに、は至極簡単に理由を述べた。
別に、ハルヒと環をくっ付かせる為に『ブーケを取れ』と言ったわけじゃない。


「あ、そういう意味だったのか?」


間抜けな声を上げ、環がに問いかける。



……やっぱり、“そういう意味”にとってたのか



ぶはっとつい笑ってしまう。
そこまで自分のいいように解釈出来る環が、は羨ましかった。


「な、なぜ笑うのだ!?!?」


「や、ごめっ あはっ……くくくっ」


一度笑いだしてしまえばなかなか止まらなくて、は腹を抱えながら環にストップと意味を込めて手のひらを向けた。
身体をくの字に折り、くつくつと笑えば身体は上下に動く。


「でもま、頑張れよ、環先輩?」


にーっこりと笑顔を浮かべ、は環の肩を叩いた。


「なっ!!」


「でも、まさかこんなにも早く話が展開するとは思わなかったな」


腕を組みながら、驚く環の声を遮って鏡夜がと馨を交互に見つめた。
二人がくっ付くのは目に見えて分かってはいたが、こうもプロポーズまでが秒読みだとは思わなかったのだ。


「でも、いつか結婚するだろうな〜とは思ってたよねぇv」


別れる事はないと、誰もが思っていた。
それだけ、周知の仲だったのだろう。


「幸せになるんだぞ」


「だから、まだ結婚しないって」


と馨の肩を叩く環に、が鋭くツッコミを入れた。
結婚するのは、学校を卒業してからの話だ。

それでも、幸せを祈ってくれているのは嬉しかった。


「……ありがとな、環先輩」


だから、ポツリとお礼を言った。














「……なんか、すっごい緊張するんだけど」


「なんでだよ」


現在、と馨はの家の前に来ていた。
そこは、両親と姉の揃う──本家だ。


「父さんも母さんも、姉さんも……絶対認めてくれるって」


「だけどさぁ〜」


「ったく、しょーがねぇなぁ!」


渋る馨に苦笑を浮かべ、はギュッと馨の手を握った。
二人の将来の為に、今から大切な第一歩を踏み出す二人。

認めてくれると分かってはいても、それでも挨拶をするとなれば──緊張は拭えない。


「大丈夫 俺がいんだから」


「それ、普通なら僕の台詞だと思うんだけど」


「気にしてたら男がすたるぜ?」


言って、はにっこりと微笑むと馨の頬に口づけた。
そんなにお返しをするかのように、馨はの唇に口付けをする。

思いが通じる瞬間。
全てが通じ合い、同じ気持ちだと確認し合える。


「……大好きだぜ」


「僕は愛しちゃってるけどね」


「……減らず口」


「知ってる」


そんな風にいつものやり取りを繰り返し──と馨は一歩を踏み出した。
分かりきっている未来。
だけど、そんな未来を切り開き手に入れるのは──














二人次第……














end





長い間、連載にお付き合い頂きましてありがとうございましたm(_ _)m
ようやく、最終話に辿りつきました(^_^;)
個人的に、ここまで長くなるとは想像もしておらず……ですが、応援して下さった皆様のおかげでここまでやってこられました。
話は続くような形で終わっていますが、この先は読者の皆様の想像にお任せします^^
読者の皆様の数だけ、物語は分岐していくってわけですね^^

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