December.24
PM 5:00
中央棟 大広間

闇に染まりはじめた桜蘭学院内の一角で、パーティが行われていた。


「今宵集まりし子羊達よ この日を共に過ごす幸運と、至上の美に感謝を」


手に燭台を乗せ、優雅に喋るのはホスト部の部長である環だった。


「主の祝福と共に、その扉を開きたまえ
 桜蘭ホスト部X'masパーティへようこそ……!」


にこやかな笑顔と差しのべられた無数の手。
ホスト部員全員が、客である姫君に優しく御手を差し伸ばしていた。










NotxxxPersist-ence 第五話










「……ハルヒ、テンション低いな」


こそ」


きゃあきゃあとはしゃぐ女生徒と部員を温かく?見守りながら、もハルヒも少し反応に困っていた。
金持ちのやる事に慣れていないハルヒ、こういう事をした事のないの二人にとっては何とも部員のようにはしゃげるはずもなかった。


「こおら!ハルヒ!!テンション低いぞ」


と同じこと言うんですね……こういうのは慣れていないのです」


腰に手を当て、低いテンションを指摘する環。


「殿ー、テンションが低いのはもだと思うけどー?」


「いらんことを言うな!」


光にハッとしては声を上げた。
言わなきゃ環にバレなかったのに、と。


「仕方ないだろ?こういうのは俺だって苦手なんだから」


大きく溜め息を吐きながらは言い切った。
いいところの娘なら、こういう社交の場に出るのは必須な事。



……俺は、必要とされちゃいねぇからな



だからこそ、そういう社交の場に出ることがなかった。
それならば、苦手でも仕方はあるまい。


「自分も、クリスマスなんて次の日の朝に父が職場から持ち帰ったケーキを食べたくらいで……」


「じゃあ、ハルちゃん一人ぼっち?」


「そうですね……」


光邦の問い掛けに、顎に手を当て考えながらハルヒはとりあえず肯定した。
父も一人でハルヒを育てる身なれば、仕事だって忙しい。


「去年は確か……『加藤家の食卓クリスマスSP』を……」


「あー、庶民の為の庶民の知恵の番組ねー」


どうやら知っていた番組名に、環が馬鹿にするような笑いを浮かべ呟いた。


「「僕らにゃ無縁だけどねー」」


「ああ、そういう反応だろうと思ってました」


予想内の環と光と馨の反応に、ハルヒは肩を竦めた。


「ふーん 豪華パーティーもハルヒにとっちゃ豚に真珠なワケね」


はどうなわけ?苦手とか言ってたけど」


光のつまらなさそうな反応とは裏腹に、馨は首をかしげに話題を振ってきた。


「クリスマスとか、俺には関係ないからな 一緒に祝う奴もいないし……一人暮らしするまでは────……」


呟くの言葉は途中でかき消えた。
その先の言葉を口にする事が出来なかったのだ。

痛い思い出、苦い記憶、すべては思い出したくない物。


「こういうパーティーとは無縁で育ったからな」


かき消した言葉を埋めるように、そう続けた。
そう、何があったとしてもは無縁な生活をしてきたから。


「まあ、せっかくだから料理くらいは食べておいたらどうだ?」


「見た感じじゃ、ごちそうだもんな」


いいものを食べることには慣れている
並ぶ料理を見ても普通に感じるが、ハルヒは違ったようだ。


「ごちそう……お、大トロ、とか?」


照れるような、そんな表情を浮かべ思い浮かんだものを口に出した。
そんなハルヒの反応を『可愛い』と思わないはずもなく。


「誰か!大至急ここに大トロを!!」


「ハルちゃん、タッパーあるよ」


「つつましやかさん……v」


「はにかみやさん……v」


鏡夜に指示を出す環、タッパーを手にハルヒを見やる光邦、両脇からハルヒを抱きしめる光と馨。
そんな様子を見て、は少しだけハルヒにジェラシーを感じていた。


「……っ」


下唇を噛み、視線をつい逸らしてしまう。
誰もがそんなに気付かない中、ただ一人だけの様子に気づく者がいた。



────……



鏡夜が特上寿司を十人前追加の電話をしている最中、叫ぶハルヒから馨が離れた。
そして、少しだけ寂しげなを見つめ。


「何々?も何か欲しかった?」


「なっ!!んなわけねーだろ!」


ふんっ、と視線をそらし唇を尖らせた。
その様子に、馨は苦笑した。



ああ、やっぱりいつもの



そんな風に確認できるだけで、とても安心できた。
そう思うのは何故なのか、分からなかったけれど沈んだ顔は見たくないと馨は思った。











「なあ ハルヒのやつ……まだ来ないのか?」


イスに座り、背もたれにもたれ掛かった。
待つことに飽き飽きし始めていた。


「もうそろそろ来るころだろう」


腕時計を見つめ、の問い掛けに鏡夜が答えた。


「うわあああああ!!」


「「お、来た来た」」


ハルヒの叫び声と同時に、扉を開けて入ってきたのはハルヒを肩に担いだ崇だった。











to be continued.....................




ヒロインの心の動きと、馨の心の動きを見せたかっただけだったり。(笑)
この回は、というか……大体ハルヒと光と馨ってくっ付いてるから書いててヒロインの様子が楽しく書ける。
恋愛絡みはヒロインが女の子になるように頑張りたいな。(>_<)






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