「……は?」


は、双子の言葉に耳を疑った。
目を幾度も瞬かせ、まじまじとその姿を目に焼き付ける。



こいつらは……いったい何を言ってるんだ?



まるで、信じられないと言わんばかりの視線。
しかし、そんな視線すらも予想の範疇だといわんばかりに双子はいつまでも悪戯の笑みを浮かべていた。










NotxxxPersist-ence 第七話










「……何で俺まであんた等のオモチャにならなきゃなんねーんだよ」


「その格好で言っても説得力はないよ?」


の言葉に、満足そうにくすくすと笑う馨。


「そうそう 諦めることだね」


その馨の隣で、光も満足そうに楽しそうにを上から下まで見つめ笑う。


「無理やり更衣室に押し込めて、『着替えないなら僕らが手伝おうか?』なんて言ったやつ等が言う台詞か!?
 あれは完全に脅しだったぞ!?着替えなきゃ無理やりにでも僕らが着替えさす!みたいな……見るぞ!みたいな!!!」


「「はいはい、言いたきゃ勝手に言ってな 結局、着替えちゃったわけだしね」」


「うっ」


の言い分をさらりと交わす光と馨。
言っていることも間違っていないため、は何も言い返せなかった。

『嫌だ』といいながらも、結局着替えたのは『の意思』だから。


「……ぜってぇ似合ってねえ!」


「「似合ってるよ」」


光と馨の言葉には顔を背けた。

黒地の布に、赤や白の映える色の花和柄のロングドレス。
背中には斜めに帯を締めたようなリボン、左側に深めに入ったスリットがの細く長い足を際立たせていた。
髪もアップにし大きな花の髪飾りをつければ、もう誰かもわからない程に変わっていた。


「…………っ!」


顔をほんのりと赤く染め上げながらも、双子のほめ言葉を素直に聞き入れなかった。
「ふんっ」と鼻を鳴らし、はツカツカとパーティー会場へと歩んでいった。


「「ほんと、って素直じゃないよね」」


「でも、それがちゃんのいいところだよねぇ〜」


双子の言葉に、近くで一部始終を見ていた光邦が楽しそうに呟いた。










「ハルヒが頑張ってるのに、俺がこんなことしてていいのかな……」


ハァッと大きくはため息をついた。


「ほらほら、言葉遣い」


「あ?」


かけられた声に、不機嫌そうには視線を向けた。
そこにいたのは馨だった。


「んだよ、馨か」


「光がよかった?」


「んな!?」


がっかりとするに、苦笑しながら馨がそう問い掛けた。
それに驚くは、なぜわかった?と言いたげな視線を馨に向けた。


「やっぱり……は光かー……」


「な、なんだよ……」


「いや、なんでもないよ」


「? 光はハルヒだろ?」


寂しそうな悲しそうな表情を見ていると、馨はなんだか心臓を鷲づかみにされた気がした。
ぎゅうぎゅうと胸が苦しくなる。


「……、踊らない?」


「あ?」


「『あ?』じゃないよ 今はオンナノコなんだから」


「……っ!」


そう言って馨はの手をとり、その手の甲に唇を軽く当てた。
触れるだけのキス。
部活では見慣れているはずの行為が、いざ自分に降りかかると顔を赤らめずにはいられない。


「でも、俺は……」


「俺じゃないよ、


「……私、は……」


「別にいいじゃん せっかくこういう格好してんだし?楽しんどこうよ」


スッとの手を引いた。
抵抗なく馨の腕の中に引き込まれたは、再度顔を真っ赤に染め上げる。


「……しゃーねーな っと……今はオンナノコだったんだよな」


ハァッと大きく息を吐き呟くと、『ああ』と思い出したように呟く


「お手柔らかにお願いね?馨」


「……っ あ、当たり前じゃん」


にっこりと微笑んだが、何だか知らない女の子のようで一瞬馨は反応に遅れた。


「ねぇ、馨」


「ん?」


流れる曲に合わせて足でリズムを踏み、くるくると向きを変えて踊る。


「どうして私を踊りに誘ってくれたの?」


すんなり出てくる女言葉。
それは、家にドロを塗るために男言葉を使っている証拠でもあった。


「……なんとなく」


「嘘でしょ 馨が理由もなく私を誘うはずないもんね
 私をからかうなり、馬鹿にするなり……絶対何かしら理由があるはずよ」


女言葉でも、嫌味っぽさ毒舌は健在のようだ。
馨の顔を見つめ、軽く首をかしげた。



これが本当のなのかもしれないな……



その仕草を見ながら、馨はそんなことを思った。
普段は男として振舞えていても、"女"としての部分が出る時は本来のが出てくる。


「馨?聞いてるの?」


「あ……うん なんか、寂しそうに見えたからさ」


「うん?」


の問いかけに答えた馨だが、はむしろ疑問が増したようだった。


「何で、私が寂しそうに見えたの?というか……何で馨なんかが私を気にするの?」


グサッ

の言葉が馨の胸に突き刺さる。



そっか……は自分の気持ちに気づいてないんだ



そこで気づいた事実だった。
が光を気にしていること、それを知っていたから気になった馨。
けれどそれに気づいていないのだから、は謎なわけで。



というか……どうして僕はを気にしたんだろう?



そして、馨自身も疑問が生まれた。
他人のことには敏感なのに、自分のことには鈍感になる。
自分の気持ちがわからないから、他人に敏感なに感づかれないのだけれど。


「馨?」


「……そんな話はいいじゃん ダンス、楽しもうよ」


「あ、そうだね うん」


すんなりスルーされた馨自身の話。
ダンスへの話題をふったのは馨なのに、なぜかちょっとだけ悲しくなった。



分けわかんねぇ……



ギリ……

馨は奥歯をぐっとかみ締めていた。
それでも、それを表情に表すことなくと楽しくリズムを踏んだ。











己の気持ちに気づかない愚か者が二人。
叶わない恋なのか、それとも叶う恋なのか。
片方が泣くのか、それとも大どんでん返しで二人が笑うのか。

それは神様のみが知る未来────










to be continued.....................




ヒロインは自分の気持ちに気づかず、馨のランクが上がった感じでw
馨も気づいてないけど、着々と思いは膨らんでいる……といいな。(おい)






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