「「それではラストイベントです」」


光と馨の声が響いた。
あれからすぐには服を着替え、また男装姿に戻ってしまった。
だから、光と馨も他の客と踊ったり進行を勤めたりとしていた。










NotxxxPersist-ence 第八話










「本日のトップ賞、都姫に贈られます祝福のキッスをキングより……」


「お 出番か」


「"変更"して、藤岡ハルヒ!」


光と馨のマイクの声に反応し、腰を上げる環。
しかし続けられた言葉に、その瞳は丸く見開かれることとなった。


「「は!?」」


「ちょ、お前ら!?」


驚く環とハルヒ。
そして、いきなりの指名変更に声を上げる
しかし、それでも双子は今の言葉を取り消そうとはしなかった。


「「だって、ラストにはアクシデントがあったほうが盛り上がるって鏡夜先輩が」」


その鏡夜の言葉を率直に受け止め、そのままのとおりアクシデントを演じる双子。
は大きく溜め息をつき、指先を額に当てて首を左右に小刻みに振るだけだった。


「……なあ ハルヒって……ファーストキス、まだだったはずじゃ……?」


「!!!」


の言葉に環はしっかりと耳を傾けていた。
先ほどよりも目を見開き、まるで猫の毛が逆立ったときのように髪を逆立てていた。


「そのキス、待ったぁぁぁ──!!」


邪魔をする、という行動をとらなければきっと頬へのキスで終わっていたことだろう。
それを環の邪魔が原因で、ハルヒは都姫と唇と唇のキスを交わさなければならなくなった。


「「…………」」


「あーあ これが本当のアクシデントってやつだな」


驚き固まるハルヒと環。
そんな二人を見つめ、肩をすくめて他人事のように呟く
他の部員メンバーといえば、面白そうな笑みを浮かべ固まる二人を見つめていた。


「ハルヒのやつ、可愛そうだな」


「そうだよねぇ〜 もしファーストキスだったならぁ……」


そう呟き、と光邦は顔を見合わせた。
そして、再度ハルヒに視線を戻すと苦笑した。



相手が女って事だもんな……
ハルヒって本当に哀れかも……



環の下手な邪魔が原因で。
環は蒼白した顔をし、ハルヒは軽蔑の眼差しを環に向ける。
だが、自業自得なのでは環に対し何も言わない。

フォローも。
嫌味も。
何も。











「なあ、環先輩?」


部室で落ち込む環に、は溜め息交じりに声を掛けた。
その声に、環は無言で見上げる。

その瞳はうるうると潤んでいた。


「……下手な邪魔立てしなきゃ良かったな?」


「うっ」


余計に傷を抉ってしまったようで。
環はしくしくと涙を堪えていた。


「俺はぁ……俺はぁ……っ」


えぐえぐと、涙を堪える。
しかし、堪えきれず環の瞳からは涙が零れ落ちていた。


「あんた、泣きすぎだぜ?あんなのほんの少しのアクシデントだろ?」


泣き止まない環に、うんざりするようには溜め息をついた。
これが、男女同士のキスだったらハルヒだってきっともって何か言っただろう。
けれど、女同士なのだからそこまで問題はないはずだ。


「女同士だったんだ そこまで気にする事じゃねーよ」


バシンッ

笑顔を浮かべ、は環の背中を軽く叩いた。
それからヒラヒラと手を振りながら、部室を後にした。


「環先輩も、帰り支度終わったら帰れよ〜?」


そう言い残して。












「ハルヒ、可哀相だったねぇ」


「ほんと 凄いアクシデントだったもんねぇ」


「人事だと思ってー……」


廊下を歩いていると聞こえてきた光と馨とハルヒの声。
はつい、ぴたりと足を止めてしまった。
突き当たりの廊下を歩く三人の話を盗み聞くように。


「ま、女同士だったからまだいいんじゃん?」


「そりゃ……まぁね」


「そんなに気になんなら、消毒でもしてやろっか?」


くすくすと笑いながら、光がハルヒに近づいていった。


「────っ」


その様子を見て、息を呑んだ。
見たくない。
そう思うのに、は目を離せずにいた。

カツン……


「「「!?」」」


一歩後ずさった瞬間、の靴音が廊下に響いてしまった。
瞬間、振り返った三人と目が合ってしまう


「ごっ、わりぃ!!」


そう叫ぶと、慌てて踵を返し駆け出していた。



み、見ちゃいけないものを見ちゃった……んだよな



頭の中はこんがらがっていた。
不意に"わりぃ"ではなく"ごめん"という言葉が出てきそうになるくらいに。


「え……」


「あ……」


その状況に頭がついていっていないのは、何も知らないハルヒと光だった。
そして、の思いに気づいている馨はいち早く駆け出したを追いかけていた。


「ちょ、馨!?」


駆け出した馨に、光は目を白黒させて驚いていた。
無理もない。
なぜが『悪い』と口にして駆け出したのかも、理解できていないのだから。


「光はハルヒと一緒に帰ってて!僕はを追いかけるから!」



今は、と光とハルヒを会わせちゃいけない気がするっ



そう思ったからこそ、即座に出てきた言葉だった。
分からないまま、それでも光は馨の言葉を聞きうけ頷いていた。













to be continued................




ここまで鈍いと笑えますね。(おい)
ヒロインはとことん鈍く行きますよー!
ので、後に馨が可哀相になるかもしれない……でもそれは予定だから未定w






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