「はぁっ……はぁっ……っあ!」
無我夢中に、桜蘭学院内を走っていた。
息は上がり、視界はぼやけ、足がもたつく。
は倒れそうになるのを必死に堪えながら、懸命に走っていた。
どうしてっ……
どうしてあんな所を見なきゃなんねーんだ!!
つーか、どうして……どうしてこんなにも苦しいんだよ!?
わけの分からない感情に飲み込まれていく。
理解の出来ない感情は、ただ苦しさを与えることしかなかった。
NotxxxPersist-ence
第九話
「!!」
「────っ!?」
掛けられた声に反射的に足は止まった。
その声が緊迫感に満ち、静止させるように叫んでいたから。
「か、かお……る?」
振り返ると、そこに居たのは光の片割れである馨だった。
なぜここに?という顔を、は馨に向けていた。
「なんで……なんで追ってくんだよ!?」
近づいてくる馨から離れるように、は同じ歩数だけ後ずさる。
それでも、歩幅が違う。
じりじりと、と馨の距離は縮まっていった。
「なんで……くんだよ どうして……なんで!?」
「心配だったからに決まってるだろ!?」
手の届く範囲にまで縮まった距離。
馨は即座に、が逃げないようにとその手を掴んだ。
「なんで馨が心配なんてするの!?別に関係ないじゃん!」
「関係なくなんかないだろ!?僕らは友達じゃんか!
友達の心配をして何が悪いのさ!」
叫んだ馨。
けれど、その言葉を発したとき心につっかえる何かを感じていた。
「心配されるようなことなんかないってば!!」
「んな顔してる奴が言う台詞かよ!?」
苦しそうな顔はお互い様。
けれど、心配されるようなことなどないと言うには説得力に欠ける顔であった。
「────っ!」
ぱっ
は慌てて馨から視線を逸らすように、顔を背けた。
心臓が早鐘のように鳴り続ける。
苦しい……
苦しい苦しい苦しい……
心臓の音が邪魔だっ……
先ほどの光景を思い出すと胸がギュウギュウと締め付けられる。
何で……どうして……
どうして僕は、こんなにが心配なんだ?
どうしてあんな顔のを見ると……苦しくなるんだ?
光のことで傷つくを見ていると、胸がギュウギュウと締め付けられる馨。
前進し続ける思いと心。
けれど、前進しない理解。
その差が大きければ大きいほどに、痛みは苦しみは強くなる。
「────……ごめん、馨 心配してくれてありがとな」
ポツリ
小さくがそう呟いた。
背けた顔をゆっくりと馨に向け、にこりと笑みを浮かべる。
「あ、いや 別に……友達だから当然じゃん?」
少しだけ言葉に詰まった。
けれど、馨もすぐににこりと笑みを浮かべ胸を張った。
「じゃ、帰ろうよ」
帰る方向を指差す馨にコクンと頷いた。
は歩きだけれど、馨はきっと家からの迎えの車を待たせているだろう。
「急ごうぜ!」
そういい、は駆け出した。
「ただいま帰りました」
そう言い、は家のドアをくぐった。
まだ夜にはなっていない為、玄関大広間でメイドや執事達が出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
家の門をくぐれば、ここはもう家族の監視下にある。
たとえ、家に家族が誰一人居なかったとしてもメイドや執事たちが居る。
いつどこで、どう通告されるか分からない。
「お食事の用意は出来ております」
「お風呂も、お湯を張っておきました」
「ええ、ありがとうございます もう上がってもらって構いません」
それぞれに報告をするメイドと執事。
その言葉に、はお嬢様の笑顔を向ける。
そして、もうすぐ夜になる────だから、雇っていたメイドや執事達に上がるようにと告げた。
「はい、かしこまりました それでは、私どもは本日は失礼致します」
「ご苦労様でした」
そうやり取りを交わし、全員が更衣室に支度をしに向かった。
その間、は自室に向かい服を着替える。
あー……かったるいなぁ
小さく溜め息を吐きながら、パタンと自室のドアを閉めた。
リボンを緩め、外し、制服を脱ぐ。
着替え終わり、食事の用意されている部屋へと向かうとすでに家には以外誰も居なかった。
「あー……開放されたぁ〜」
うーん、と身体を伸ばしながらイスに腰掛けた。
目の前に並ぶ食事はどれも高級料理ばかり。
それを目の前にし、は嬉しそうな笑みを浮かべると。
「いっただっきまーす」
フォークとナイフを手に、本日のディナーに先を下ろした。
to be continued.....................
もどかしい……馨とヒロインがもどかしすぎる。(笑)
そして、ヒロインの自宅が登場!!
とりあえず、家族の前では猫かぶりって事でメイドや執事の前でも……と。
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