正直、気が進まなかった。

あたしが周りから嫌われてる自覚はあるし。
何より、あのホスト部ファンのお嬢様達と顔を合わせた時の事を思うと、それだけで頭痛がする。

けど、行けば美味しい料理がたんまり食べられる事は確かだし……
もしかしたら、料理が余ったらタッパーにテイクアウトできるかな〜、なんて期待もあった。

それに、強引かつ一方的とは言え、約束は約束なんだし……

きっと好意から誘ってくれた双子の心遣いを一方的に突っぱねるのも、申し訳ないと思ったから。











イトシイヒト 第六話











先輩、どうしたんだろ……?髪が長いハルヒがどうとか言ってたけど」


が行ってしまった方を見ながら、は料理をぱくつきつつ呟いた。

突然声をかけてくれたと思ったら、そんな事を呟いて突然行ってしまった。
数少ない気を許せる人とやっと話せたのに、ちょっと残念だったが……まあ、むこうはパーティーの主催者。
忙しいだろうから仕方ない。
双子もハルヒも、最初にちらっと挨拶できただけで、後は忙しそうにしていたから。

しかし、髪の長いハルヒとはどういう事だろう?
女装………ではなく、女子としての正装でもしているのだろうか?



「あらあら、随分と場違いな格好の方だと思えば……庶民特待生さんでしたのね」


「嫌だわ、こういう場に招待して頂いた時は、正装で来るものですのに。
 先ほどのくんへの態度といい、礼儀を疑いますわね」


「まあ、そんな事を言わないであげましょう?
 貧しく品のないお育ちですもの、その程度の礼儀すらわからないのも仕方ありませんわよ」



……はーい、これで今日14人目ぇー。



………心の中で(しかも棒読み口調で)カウントしつつ、チラリと横目で声の方を向く。
このくらいは予想はしていたので別に腹は立たないが……さすがに鬱陶しいし、美味しいはずの料理もマズくなる。

まあ確かに、場違いな格好である事は否定できない。
ドレスを持っていないとは言え、こんな盛大なパーティーにいつもの制服もどきで来たのは、さすがにどうかと自分でも思うから。


「………はぁ〜」


「まっ……何ですの?こちらを見て溜息なんかついて」


それでもやはりウザイものはウザイ訳で、無意識に盛大なため息が漏れてしまう。
一方、向こうもそれを目ざとく聞きとがめたようなので、結局は彼女らの方に向き合った。


「いや、よくもまあそれだけ、照らし合わせたように同じ内容の嫌味が言えるもんだと思いまして」


「なっ……!?」


「さっきからあんた達みたいな人はたくさんいるんですけど、揃って同じ事ばかり言うんですよ。
 お嬢様って案外、語彙感覚が貧困なんですねぇ」


溜息交じりにそう言ってみると、たちまち彼女らの顔が怒りで赤くなる。
……この程度の挑発で早くも怒り心頭とは。どれだけプライドが高いのか、沸点が低いのか。
自分たちをよりも格の高い人間だと言いたいのなら、冷静ににこやかに言い返すくらいの度量は見せてほしいものだ。


「っ……!!ふ、ふん!お育ちが悪い方ほど口だけは達者なのかしら。ねぇ?」


「そ、そうですわ。けれどそれも仕方がない事。精々そのくらいしか誇れるものがない、哀れな人なのですから」


「それに、なぁに?先ほどから見ていれば、ひたすら卑しく食べ物を口にして……まるで欠食児童ではありませんの」



……訂正。『一人で』言い返すくらいの度量は見せてほしい。



3人で目配せしあって、目を泳がせながら嫌味を続ける彼女らに、は本日何度目かの溜息をついた。
女子と言う生き物はどうしてそういちいち集団でつるみたがるんだろう……誰かと一緒じゃないと、嫌味も言えないのか。


「だって、残したら捨てるだけになっちゃうわけだし、もったいないじゃないですか」


「あらあら、いかにも庶民らしいお考えですのね。食べ残しにすら縋らなければいけないなんて、可哀想に」


「あたしから言わせりゃ、そういう考えが浮かぶあんた達のほうがよっぽど可哀想ですけどね」


「なんですって……?」


「だってそれって、余ったものを捨てる事に何の抵抗もないって事でしょ?
 食べ物が凄く苦労して作られてる事も、たくさんの動物の命をもらってるんだって事も考えないで」


あくまで淡々と。けれどハッキリとした口調で言い続ける。
そして、皿に盛った料理を平らげて飲み下し、じっと彼女らの方を見て……


「哀れですよね。物に恵まれすぎると、比例して心はどんどん貧しくなっていくんだから」


薄い笑みを浮かべ、まるで嘲笑うような視線を向ける。
もちろん、彼女らは怒りで震えているが、先に喧嘩を売ってきたのはそっちだ。
こちらはただ、売られた喧嘩を買っただけ。

……言ってる内容は多少、攻撃的すぎたかもしれないが。


「ふふっ……随分と気が強くていらっしゃるのね。ならどうかしら、私達とポーカーで遊びませんこと?」


今度は、今まで言い合っていた3人とはまた別の方向から、別の女子が出て来た。
はい15人目ー……と思いつつ、その声の方向を向く。
そこにいたのは、いかにも高慢な気質といった一人のお嬢様と……その後ろに、数人のお嬢様たち。


「嫌です、面倒くさいんで」


売られた喧嘩は基本的には買う主義だが、そろそろ数が多くて面倒になってきたので、キッパリそう言い捨てる。
……まあ、数を増長させているのは自分の自業自得なのだが……
そこはそれ、ナメられないためにも売られた喧嘩は倍返し、と言うか。

即答で断ったことがプライドに触ったのか、彼女は一瞬、ピキリと怒りを顔に滲ませた。


「あ、あらそう。
 けど、そんな風に即座に断ると言うことは、よほど自信がないのね?貴女にポーカーは高尚過ぎたのかしら」


「はあ、まるで定型文みたいなお決まりの挑発ですね、それ。芸がないっつーか」


「……ッ!?」


「……ま、いいですよ。興味はないけど、売られた喧嘩は買いますから」


あからさまに気分を害した表情になった彼女はさておき、そう答えてポーカーテーブルに向かう。
……と、そういえばカードゲームの主催者である常陸院兄弟はどこに行ったのだろう?
と言うか、先ほどからホスト部の面々の姿が見えないが……。



先輩も何だか忙しそうだったし、何かイベントの準備でもしてんのかな……?



「ホホホ、度胸は良いんですのね。
 では、ドロー・ポーカーでジョーカーはなしのルールにしましょう。よろしくって?」


「あ、はいはい。よろしいっすよー」


ひらひらと手を振って、肘の上まで袖をまくってからテーブルにつく。
そして、彼女を応援する声とに対する嫌味は無視しながら、は配られたカードを手に取った。










そして、十数分後。
ポーカーテーブルの周りには、なんとも重い空気が流れていた。


「う、嘘ですわ……」


「こんな事が……」


テーブルを取り囲んでいるのは先ほどとは打って変わって、信じられないといった顔をした面々。
みんな一様に言葉をなくし、ただ呆然とカードの流れを見て……


「……これでどう?8のフォーカードですわ」


「まあ!素敵ですわ、早乙女の君!」


「さすがに、このカードにはさんも……」


対戦者の思った以上の強いカードに、一気にわっと周りが沸く。
確かに、ジョーカーがないルールである以上、これに勝てる役は2つしかないが……


「ロイヤルストレートフラッシュ」


は至って平然と、そのうち一つを差し出して見せた。
もちろん、その瞬間に空気が凍ったのは言うまでもないだろう。



……ま、ざっとこんなもんか。
何でか知らないけど、昔からこういうカードゲームの類はやたら強いんだよねー、あたし。



「な、なぜですの……?さっきから、誰一人勝てないなんてありえませんわ……」


「っ……!!貴女まさか、イカサマを……!?」


「それはないですって。何のために腕まくりしたと思ってんの」

もしかしたらそう来るだろう事も考えて、腕をむき出しにする事で潔白をアピールするためだ。
一応スカートにはポケットがついているが、それはセーターに隠れている上に左側にある。そしては右利き。

なので、ポケットを使ったイカサマは不可能。
イコール、この結果は……自力。


「はーい、お嬢様方!何だか盛り上がってる………ってか、盛り下がってる?」


「お、っちロイヤル・フラッシュじゃん!すっげー!」


その事に気付いて彼女が苦虫を噛み潰したような顔をしたと同時に、常陸院ブラザーズが帰って来た。
そしてその瞬間に、彼女たちの顔は今までとは打って変わった『可愛いお嬢様』の顔に変わる。



……変わり身、早ッ!!



「……2人とも、どっか行ってたの?」


「ちょっとねー♪てかっち、何でドレス着ないのさ。なんなら、こっちで可愛いの用意するよ?」


「嫌だよ、あんな背中の開いた服。気持ちだけもらっとく」


ドレスを着る自分など想像も出来ないので、その気遣いはありがたいが勘弁してもらいたい。
スッパリ断ると双子は揃って、ぶーっと唇を尖らせる。


「似合うと思うけどなー。……で、この勝負はっちの勝ちでしょ?なら、ポイントを加算しまーす!」


「あ、どーも。てか、あたし10人くらい倒したんだけど、それもポイントつくの?」


「マジで!?凄ッ……あ、もちろん加算されるよ。これでっちの順位は………暫定2位だね」


ポイントが加算された所で何があるのかはわからないが、もしかしたら景品とかが貰えるのかもしれない。
もしそうなら、それだけでも勝負した甲斐はあったか。


「じゃあ先輩方。2人も戻ってきた事ですし、あたしはこれで。あ、常陸院ズ、もし景品とか出るなら後で教えてねー」


2人が戻って来た以上はこれで終わりだろうと思い、そう切り出す。
案の定、光と馨の前だからか、もうお嬢様達が挑んでくる事はなかった。
それを確認し、これで少しは静かになるか……と思いながら、はその場に背を向けた。

……意味ありげにニヤリと笑った双子には、気付かないまま。


「さーて、自由になれたし続いて食い倒れ第2ラウンドでも…………ん?」


また料理のテーブルに戻ろうと思ったが、窓の外が急に明るくなったため、何かと思って近付いてみる。
今はもう日が沈んでいるのに………いや、この光は人工的な灯り……?


「メリー・クリスマス!!不器用カップルに祝福あれ!!」


窓ガラスのすぐ傍まで近づいたその時、そんな声が響いた。
どこから聞こえてくるのかはわからなかったが、この声は……忘れもしない、環の声。

ガラス越しに外を覗いてみると、そこには煌びやかにライトアップされた巨大なクリスマスツリーと。
そしてその傍で幸せそうに笑い合う、1組の男女の姿があった。



不器用カップル……か。



一体何が起こってどうなったのか、そもそも彼らは誰なのか、は全く知らない。
けれど、彼らにとって幸せな何かがたった今、起こり……それを起こしたのが環である事は、きっと間違いないのだろう。

全く事情は知らないが、何となくそう思えて。

彼らの笑顔に惹かれてか……もまた、どこか優しげに微笑んでいた。








『ラストワルツです』


あれからすぐにダンスタイムとなり、お嬢様達とホスト部の面々は思い思いにワルツを踊っていた。
ハルヒはどうやら、足を怪我したらしく隅っこで椅子に座っていたが。

そして、スピーカーを通して告げられた最後の曲………ラストワルツ。
いよいよ、パーティーも大詰めというわけだ。



さて……おなかいっぱい食べたしあたしはもう用ないけど、どうしよう。
挨拶もなしに帰るのは失礼だし、後は終わるまで隅っこで見てよっかな?



「「おーっと、どこに行くのかなー姫♪」」


そんな事を思いながらホールの隅に行こうとすると、その前に双子に止められてしまった。


「え、何?てか、何度も言うけどその呼び方は……」


「うん、何度も聞いたけど、悪いけど今だけは我慢してもらうよ?ラストワルツが終わるまで、っちは姫なんだから」


「はぁ?」


言ってる事の意味がわからない、と言わんばかりに、思いっきり怪訝な顔で交互に2人を見る。
すると双子はニヤリと……それはそれは楽しげな笑みを浮かべて、を見た。


「「だって、っちは殿とラストワルツ踊らなきゃダメなんだからね」」



……………………………。



「はああぁぁぁぁ!?!?」


物凄い発言をされ、は数秒の間を置いて思いっきりそう叫んだ。
もちろん一斉に注目を浴びたが、今はそれ所ではない。


「何で!?つか、何それ!」


「えー、だって最初に言ったじゃん。『ゲームのポイント獲得数上位者は部員とラストダンスを踊る』って」


っち、さっきポーカーでバカ勝ちしてたから、見事2位なんだよねー」


言いながら、ポイント成績表を見せられる。
確かにそこには、総合2位にランクインしている自分の名前があった。

何事かと察し、ホスト部の面々までもが集まってくる中、はただ呆然と成績表を眺めていた。
にとっては本気で聞いていない、今初めて聞く事実だ。
さーっと音を立てて血の気が引き、嫌な汗が背中を伝う。


「もしかして……興味ないから最初の説明、全部聞き流してた……とか?」


ぽつりと、の口からそんなツッコミが放たれる。
思い切り図星をさされたその言葉に思わず視線を逸らすと、「あらら……」と、同情するような呆れたような声が返ってきた。


「ま、そーゆー事で、聞いてなかったっちが悪いって事で」


「はーい!それでは、我らがキング・須王環とのダンス権を獲得したのはこの人!」


「「特待生の姫でーす!!」」


「ちょ、ちょっとおぉぉ!?」


勝手にどんどん話を進められ、ひたすら焦る。
そんな事を言われても、ワルツなど全く踊れないのだ。
しかも、こんな格好だし足元はスニーカー……どう頑張ってもただの恥さらしだろう。


「む、無理無理無理!!ワルツなんて踊った事ないし、スニーカーだし!!」


「なら尚更オッケーじゃん。足踏んでもハイヒールよりは痛くないし」


「って事で、いってらっしゃーい♪」


腹が立つほど陽気なその言葉と共に、双子に思いっきり背中を押される。
慣性の法則に従って、の体は思いっきり前につんのめったが……


「ようこそ、俺の姫。また会えて嬉しいよ」


「う、え……あ……?」


「さあ、どうぞこちらへ。君を俺達の舞台へエスコートするよ。……いいね?」


覚えのある温もりに抱きとめられ、無様にすっ転ぶような事にはならずに済んだ。

自分を覗き込む、甘く優しい紫の瞳。
あの時、偶然にも迷い込んだホスト部で見たものと、同じ……。

心の底から『嫌です』と言いたかったが、何故か言葉が何も出てこなくて。
結局は、環に導かれるままにホールの中央へと連れて行かれたのだった。







「………光、馨。もしかしなくても、が説明聞いてなかった事知ってて黙ってたでしょ?」


「当然。何のためにっちを招待したと思ってんのさ」


「普段のノリが淡白な分、慌てふためく姿見るの面白いしね。他の姫達とのバトルは、残念ながら見逃しちゃったけど」


「まあ、もう一人くらい負かして1位取ってくれた方がもっと良かったんだけどねー」


そして、その後ろで心底呆れたように溜息をつくと。
しれっと悪魔のような会話をする双子がいたのは……彼らが与り知らない、また別の話だ。








優雅なワルツの旋律が流れる。

残念ながらダンス権を獲得できなかった他のお嬢様達が見守る中、ホスト部の(ハルヒ以外の)面々と、そのダンスパートナーに選ばれた人達が笑顔で踊っていた。
……最も、約一名ほど笑顔じゃない人もいるが。


「ワルツは初めてかな?じゃあまずは、俺の左肩に手を置いて」


「え、えーっと……そう言われましても……こ、こうですか……?」


「そうそう。そして右手を俺の手に重ねて……」


「あ、あう……」


「大丈夫だよ、俺がちゃんとリードするから。姫はただ、俺に全てを預けてくれればいい」


ニコリと微笑みながら耳元でそう囁き、初心者のにもわかるように丁寧に教えてくれる。
一方のはあらゆる項目ですでに一杯一杯だし、この体が密着している状態も恥ずかしいが、まだ何とか耐えられていた。

そして、に合わせてくれているのだろう。曲調よりもゆったりとしたテンポでのダンスが始まる。
正直それはありがたかった。いきなり正しいテンポで踊られても、足を踏んで転ぶのが関の山だから。

……しかし、それにしても……



ああぁ……見てるよ。すっげ見てるよ、お嬢様方が凄い視線で……!!



うっとりとダンスを見守る視線の中に、夜叉か般若かというような視線が複数含まれている。
その視線の鋭さは、嫉妬の炎がメラメラと燃え盛っているのが見える気さえするほどだ。

まあ、確かにホスト部一の人気者と、間違いなくこの中で一番嫌われている自分では、無理もないが……。

中には、「きぃぃぃっ!あんな庶民が環様に触れるなんて!」と、昔の少女漫画よろしくハンカチを噛み締めて涙ながらに悔しがる人もいた。
まあそれは逆に見てて笑えたので、別にいいのだが。

しかし環のリードはさすがに上手で、ワルツの『ワ』の字も知らないなのに、それでも何とか形にはなっていた。

やはり初心者、ステップはいい加減だし環の足を踏みそうになる事もあるが、足がもつれて転ぶような事はない。
というか、転びそうになっても環がちゃんと支え、フォローしてくれている。
本当にただ、自分は環に任せて動いているだけなのに……凄いなぁ、と、ぼんやりと思う。


「……って、あぁ!ごめんなさい、足踏んじゃった……!」


「えっ?ああ、全然大丈夫だよ。ちっとも痛くないから」


「そ、そんな訳ないでしょ……!あたし重いんですし」


言葉ではそう言っているが、いくらなんでも『ちっとも痛くない』なんて事はないだろう。
慌ててそう返答するも、しかし環は変わらず、甘く優しげな微笑を浮かべていた。
そして……


「ううん、そんな事はない。君はまるで天使みたいに軽いよ。……ほらっ!」


「え……うひゃあぁぁっ!?」


環はの腰に手を添え、そのまま軽々と抱き上げてみせた。
抱き上げると言うよりは、体勢的には『高い高い』に近いが……。
素っ頓狂な声を上げたに反応して皆が2人の方を向くが、その反応は黄色い声が上がったり、悲鳴が上がったりと様々だ。

しかし、こうして抱き上げてみるとわかるが、の体重は身長の割に本当に軽い。
腕も肩も腰も、力を入れたら折れてしまうのではないかと思うほど細くて……。
運動部に入っている訳でもないのに、どうしてこんなに痩せているのだろう?

ちゃんと食べているのか。特待生の成績を維持するために無理してはいないのか……。
彼女の事は、理事長である父からも特に詳しい事は聞いていないが……今、それを知りたいと思った。


「ね?」


「あああああのっ!!わかりましたから、頼むから降ろして下さい……!!」


「……ああ、姫の仰せのままに」


その体勢のままじっと佇み、の顔を見上げていると、さすがに抗議の言葉が飛んで来た。
もう少しの顔を見上げていたかったけれど、本気で困っているようなのでゆっくりとその体を床に降ろす。

そして、がホッとした表情をしたのを見届けてから……またダンスが再開された。







変な人だと思う。
本当なら一生関わりたくない人だと思う。
現実問題として、明日以降のお嬢様たちの対応が怖くもある。

けれど、まあ……こうして踊っているのも段々、悪い気はしなくなってきたし。
人の温もりに触れるのは少しだけ度胸がいるけど、でも温かくて心地いいから。



まあ、たまにはこんな経験も、いっか……。



初めて、環の笑顔をちゃんと正面から見返し。
そんな事を思ってしまった、自分がいた。



まあ、何だかんだで来てよかったかな。



そんな事を思いながら、余った料理はしっかりテイクアウトする交渉をし。
パーティーの終了後、もらった景品と共にたくさんの料理を抱え、は満足げな顔で帰路についた。

紆余曲折を経て、女子にファーストキスを捧げてしまったハルヒには、軽く同情しながら。






to be continued.....................





も、ものっそい長くなってしまいました……^^;
これでも大分削ったんですけど、相変わらず文章のまとめ能力がない(汗)
前半のヒロインとお嬢様とのバトルが思った以上に書くのが楽しくて、つい気合い入れて書いてました♪
そして、双子の出番が多くなりがちなのは、真っ先にヒロインをホスト部に巻き込む役だからだと思いたい(ぇ)

環とも少しずつ少しずつ、親密度上げていければいいかな、と^^

そしてもちろん、余った料理はタッパーに詰めまくってテイクアウトです(笑)
そこでまたお嬢様方に嫌味のひとつも言われたでしょうが、もちろん無視で。
ハルヒと2人で分け合って、「これでしばらく食費が浮く!」と喜んでいたとかどうとか……。






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