赤の夢────……
私の脳裏を埋め尽くすのは、ただただ真っ赤な光だけ









RECOLLECT 第一話









痛い 苦しい 辛い
楽に……なりたい……



それは、誰の叫びだっただろうか。


「────……!!!……ッ!!」


誰かの呼ぶ声が響いていた。
耳に届くのは、名前でも何でもない言葉。

大丈夫?
意識はある?

そんな、誰かが倒れていれば大概が掛けられる言葉だった。


「…………ぅ」


少女は小さく声を漏らし、頑なに閉じていた瞳を開いた。


「大丈夫!?なんともない!?意識はしっかりしてる!?」


「……大、丈夫 少し……身体が痛いけど……なんともない」


栗色の髪がチラチラと、少女の瞳に留まった。
コクリと小さく頷き、大事ない事を伝えた。


「……ぁ」


「あ?」


「……ひとつ、ある」


ポツリと呟かれた言葉に、その場に居た四人全員の視線が少女に釘付けにされた。


「……私、誰?ここは……どこ?」


それは、少女が一切の記憶をなくしている事を意味する言葉だった。









「……つまり、名前も何も覚えていないけどクレスケレスという町の名前だけは覚えていたわけね?」


リナと名乗った栗色の髪の少女が、確認をするように問い掛けた。
記憶を失った少女は、ただコクリと頷くだけ。


「そう それだけしか……分からない」


「面倒なことになりましたね、リナさん」


頷く少女にアメリアが溜め息交じりに、少女を哀れんだ瞳で見つめながら呟いた。


「なぁ、リナ?俺達でコイツをクレスケレスまで連れて行くのは駄目か?」


親切ごころが疼いたガウリイ。
おずおずとリナに、そう提案した。


「まぁ……記憶がないんじゃぁねぇ 武器も持ってるから戦えた事は戦えたんでしょうけど……」


「記憶がない今、戦えるかどうかも怪しいな」


「ですね」


リナの言葉を繋ぐようにゼルガディスが呟く。
その言葉に同意するように、アメリアがコクリと頷いた。


「分かったわ あなたはクレスケレスまで連れてってあげる」


「い、いいの!?」


「勿論!だけど、そうね……謝礼してくれるっていうなら、遠慮せず貰うわ
 まぁ、記憶が戻ってからになるだろうけどね」


リナはくすっと苦笑を零した。
そんなリナの言葉に少女は「ありがとう」と口にした。


「だが、名前はどうする 呼び名がなければ、面倒だろ」


ゼルガディスの指摘に、リナは「そうねー」と言葉を濁す。
その時、ふと視線に留まったのは胸元に書かれたローマ字の変形したような紋様。


「……?」


その紋様は、と読めた。
まじまじとそれを見つめながら、リナは疑問形で声を発すると。


「……これ、あなたの名前か何か?」


「……さぁ?ちょっと分からないかな……」


「そう まぁ……とりあえずは、と呼ばせてもらうわ」


リナの問い掛けに、首を傾げてしまう少女。
結局、リナの提案で少女の事をと呼ぶことに決定された。


「とりあえず……私達はこれから宿に向かうけど、構わない?」


すぐに出発するんじゃなくていいか、と意見を求めるリナ。
はコクリと頷くと「大丈夫」と二返事をし、スッと立ち上がった。

背中に背負った双手剣であるツーハンデットソードが、よりも大きくその存在を知らしめていた。



クレスケレス……そこに、何が待ち受けているのかな……



宿へ向かう道中、はふとそんな事を思った。
何かが待っているような気がするのだ、漠然としたものだったけれど。


────!早く来ないと、置いてくわよー!」


「あ、待ってリナ〜!」


先を歩くリナの声に、立ち止まり気味だった足は早足になり追いかけた。
何が待ち受けていようと、は己の記憶を取り戻す事を止めようとは思わなかった。

たとえ、悲しい真実が隠されていようとも。









to be continued.........................




とうとうスタートしました、スレイヤーズ夢。
ヒロイン、しょっぱなから記憶喪失!!それでいいのか!?(^O^)/






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