揺さぶられる……魂。
揺さぶられる……命。

ギルはの命を求め、その身に手を伸ばす。

それが、の身に眠る力を呼び起こすとも知らずに────












RECOLLECT 第十一話












「ここまでくれば大丈夫かな?」


ニヤリ

不敵な笑みを浮かべたギルが静かにを見つめた。
その瞳が嫌にいやらしく、ぞわりと悪寒が背筋を走る。



死にたくないっ



そう強く思うのに、自由の利かない身体。
恐怖は強くの身体を支配していた。


「そんなに怖がらなくてもいいよ?優しく食べてあげるから」


不敵な笑みは歪み、に恐怖をもたらした。
植えつけられた恐怖が、じわりじわりと増していく。


「やめ……て……私は……あなたに食べられるために……ここに居るんじゃ……ないっ」


弱弱しい声。
強く死にたくないと思うのに、口を割って出てくる声は何とも情けない。
それだけ恐怖に支配されているという証拠でもあった。


「ははは、それくらい俺だって知っているよ」


「────っ」


「でも、結局……俺に食べられる」


そうだよね?
そんな風にギルはを見つめ、その瞳も歪ませた。

ぐにゃり

視界が揺らぐ。
ギルの大きなごつごつした手が、の頬を撫でた。


「────……、…………、…… ………… ……、……」


ぼそりぼそりと唇から零れるギルの声。
その声を、は拾う事が出来なかった。

これこそが、本来人の命を食らう瞬間に発される呪文。

誰にも聞き取れないからこそ、あの町にだけ伝わる呪文。


「ひぐっ」


短く漏れたのは、のくぐもった声だった。


「……、…………」


「あっ……ぅ、ぐ……あっ」


どくん

どくん

どくん

どくん

心臓の鼓動が早まっていく。
そのたびにの身体は振動を続け、背を弓なりにする。



いや……だ……
死にたく、ない……よ……



感情があふれ出てきた。
そこにある生を手放したくないと。

けれど、そう思っても何もできはしない。
誰かが助けに来るのを待つしかないもどかしさが、は嫌だった。



いやだ……
怖い……
助けて……

イヤ……ダ……
コワイ……
ハヤク……私ヲ……

助ケテッ!!!!



ぎゅっとは目を瞑った。
瞬間、強く鼓動が高鳴った。
まるで、魂が命がの身体からあふれ出るかのように。


「……さあ、出てくるがいい」


バッと、ギルは手を広げた。
瞬間、閉じていたの瞳がカッと開かれた。













さん!!」


ようやく居場所を見つけたゼロス。
虚空を移動し姿を現したときは、すでに遅かった。

目の前には、明らかに異様とも思える彩が広がっていた。

紅の色。
真っ赤な、血。
赤海に浮かぶ肉の塊の……赤。


「……、さん?」


訝しげにゼロスは、その赤の中央に居る人物に声を掛けた。
立ったまま動かないと呼ばれた人物は、ゼロスに背を向けたまま顔だけをかすかに向けた。


「…………ッ」


浮かんでいた表情は。

悲しみ。
苦しみ。
恐怖。


「ゼロ、ス……」


そう言葉を口にすると、そのままは後ろへと倒れこんだ。
ふらりと、血の海の中へと倒れた。

バシャンッ!!

倒れた瞬間、滴り給っていた血を跳ねさせて。


さん!!!」


慌てて駆け寄るゼロスの姿が、凄くスローモーションに見えていた。
そんなゼロスを瞳に焼き付けながら、の瞳はゆっくりと閉じた。

暗い闇の中に、奈落の底に、意識を────落とした。













to be continued......................




なんかすげぇ事が起きたぁぁぁ────!!






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