起こせ
起きろ

私を────出せ

思い出せ
すべてを

自分自身を、相手の事を────己の、立場を

そして私を解放させろ
お前はただ一時表に出た私の一部に過ぎないのだから

本来の私を────取り戻せッ













RECOLLECT 第十二話













どしゃっ!!!


さん!!」


血だまりの中に倒れこんだに慌てて駆け寄ったゼロス。
即座にしゃがみ込むように、のそばに膝をつくとその腕でを助け起こした。


「…………」


周りを見れば、肉の塊、血のにおい。
よくよく見れば、肉の塊は人の身体の部分部分だった。


さん……あなたは一体……」


謎の存在である
普通の人間が、はたしてこんなことが出来るだろうか。
魔法を使っても、はたしてここまで無残な事が出来るのだろうか。


「……まるで、切り刻んだような……」


塊を見つめ、ゼロスは呟いた。
剣を使っても、こんな風には出来ない。
それはきっと魔法でも。


「……この、気配は……」


かすかにから漂う気配。
以前感じたものよりも強く、ゼロスに伝わってきた。
それでも、それが何なのか分かるほどのものではなかった。


「ぅ……」


さん?」


聞こえた声にゼロスはハッとして視線を落とした。
閉じている瞳を開き、その目でを見つめた。
そこに居るのは、見慣れた少女の姿。


「……私に、触るな」


けれど、紡がれた言葉はゼロスの知る少女のものではないようだった。
声も姿も匂いも気配も、すべてのものなのに。


「……さん?」


だから、再度同じように名前を呼び掛けた。


「聞こえなかったか?」


「…………」


の問い掛けにゼロスは何も答えられない。


「私に触れるな お前は私の敵だ 私に触れるな」


紡がれる言葉が、どうしても信じられなかった。
あんなに、敵視される事を恐れていたがなぜ今さらそんな事を言うのかが、ゼロスには理解できなかった。



分からない……
この気配といい、言葉といい……さんは何をしたいのでしょう?



言われるがまま、から手を離したゼロス。
その脳裏は、そんな疑問で埋め尽くされていた。


「身体が動けば……殺したものを……」


「……、さん」


悔しそうにゼロスを睨むの視線に、ゾクリと悪寒を感じたゼロス。
どこか、胸が苦しくなった。


「…………」


さん?」


しかし、そこで何も紡がれなくなったの口。
疑問そうに視線を向けると、開かれていた瞳が徐々に閉じられていった。

それは、気を失うということ。


さん!?」


「……ぅ、ん……」


慌てるゼロスの声で、は視線を開いた。
そこに移るゼロスの姿に、はゆっくりと微笑んだ。


「……助けて、くれた……の?」


「はい 大丈夫ですか?」


の問い掛けにゼロスはにっこりと微笑み頷いた。
その様子にはにっこりと微笑み、頷き返した。



ああ……いつものさんですね……



予想していたの態度に、ゼロスはホッと胸をなで下ろした。


「ゼロス?」


「あ、いえ さて……リナさんの元に戻りましょうか」


の不思議そうな瞳にふるふると首を振った。
そして、に手を差し出しながらリナの名を口にした。


「あ、うん でも……ギルは……」


ふと思い出したのは、自分を連れ去ったギルの存在。
ずっとそばにいて、の魂を食べようとしていたのに今はいない。


「ゼロスが……?」


ゼロスが倒したの?とすべて言葉にしなくても、ゼロスにはしっかりと伝わった。


「…………」


「ゼロス?」


しかし、その問い掛けにゼロスはなんと答えればいいのかと考えてしまった。
ここで『そうだ』と頷けば、ことはすんなりと進むというのになぜか頷けなかった。

脳裏を横切り、思い出すのはなのにらしくもない"あの存在"のこと。


「いえ……僕が来たときにはすでに……」


「え?」


ゼロスの言葉には驚きの声を上げた。
その驚くさまに、心がえぐられるような感覚をゼロスは感じていた。



いつもの僕らしくもありませんね
こんなことで、僕はいつも傷つきはしないのに……



慣れない感覚に、ゼロスは戸惑うばかり。
なぜ、こんな感覚を感じなければならないのか。


「……行きましょう、さん」


「…………」


ゼロスのそんな言葉に、は無言のまま差し出された手を握り返した。










to be continued................




ヒロインのなぞが深まる……(笑)
ゼロスは敵発言されちゃうわけだし。
ゼロスはだいぶ心の変化が来たっぽいので、ヒロインもズバッと大きく変化させたいですね。
とりあえず……ギルに危ない目にあったときはゼロスに助けを求めるように声を上げたので少しは進歩してはいるんですがね。






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