絶対に────……







僕は本当にそう思っていました
僕は絶対にさんと敵対なんてしたりしないと

好きだからこそ、味方でいると







まさか、そんな大どんでん返しが待ち受けているなんて……
この時の僕は────……いや、この時のリナさん達も想像なんてしていませんでしたね















RECOLLECT 第十五話















「魔族の僕がこんな感情を持つのは不思議な話ですが……僕はさんが好きですよ」



そう本当に……
魔族が誰かに対し、こんな正の感情を抱くなんて……僕は想像もしたことなんてありませんでしたね



「殺してしまいたいくらいに……同じ魔族に落としたくなるくらいに……僕のものにして、誰の目にもさらしたくないくらいに」



魔族ならではの狂気なのか……
それとも、誰もが誰かを好きになるとこう思うのか……
このような感情を抱いたことのない僕には分かりかねますが……



瞳を細め、ゼロスの瞳には危なげな色が灯された。


「…………」


「だから、安心してください 僕は決してさんと敵対なんてしませんから」


にっこりと微笑み、を安心させようとする。
けれど、それは不安を煽るばかりだった。


「────……ゼロス 本当に?」


細く、太く、低く。
の問いかけの言葉が、口を割って出てきた。


「それは勿論ですよ 嘘なんて吐いて、僕が得することなんてありますか?」


これはいつもの調子の受け答え。
くすくすと微笑を携えたまま、ゼロスは口元を歪めた。


「あ、ありがとう」


敵対をしないというゼロスに、嬉しそうには微笑んだ。
まだ、告白に対しての答えは返せない。


「でも、ゼロス その……『好き』って言ってくれたことへの返事だけど……まだ、なんとも……言えないよ」


「ああ 構いませんよ、全くね
 特に急いでいるわけじゃありませんし 僕自身、さんよりも長生きするわけですから……
 さんのペースに合わせます」


さすが魔族。
そう言えてしまうほどの余裕がゼロスにはあった。
二人の凄く時間の流れには、天と地ほどの差がある。

のペースで、というゼロスの言葉には嬉しそうに微笑んだ。











「あ、さんとゼロスさんが来ましたよ!」


食堂の一角を陣取るリナ達一行。
達が二階の部屋から降りてくるのを確認すると、ずっと席に座っていたアメリアが立ち上がり指差した。


「はいはい 夜遅いんだから、少しは静かにね」


そんなアメリアを軽くあしらうリナ。
扱いなれているその光景に、は微笑を零しテーブルに到着した。


「ごめんね、いきなり夜に……」


「別に構わないさ どうせ行き先を変えるのなら、早めにすべて手を打っておいたほうがいい」


の言葉にゼルガディスはカップに口をつけながら、サラリと言う。
本当に、迷惑ともなんとも思っていない様子で。


「そうですよ、さん!ここからクレスケレスに向かうとしたら、早めにここを出発しなくてはいけないですから!」


ぐぐぐっ、と拳を握り締めるアメリア。
その拳を勢いよく高らかに持ち上げる。


「アメリア そんなに熱く語るのはもういいわ 早く明日からの予定を組んじゃいましょう」


トントン

リナは人差し指を木製のテーブルに軽く打ちつける。
軽い音が響き、それを合図にアメリアはイスに再度腰掛けた。


「それで、ここからクレスケレスに向かうわけだけど……とりあえず、明日、日が落ちる前に次の町には入りたいわね」


ザッ

テーブルに広げた大きな地図。
今居る場所から指で辿り、次の町をトントンと指し示す。

ある程度距離があり、早く出ないと日没には間に合わない距離だった。


「結構遠いんだなー」


ボケーっと地図を見ながら感想。
そんなガウリイの反応に、リナはあからさまに溜め息を吐く。


「だぁぁぁから、夜に集まって予定を組んでるんでしょーが!」


ワザとボケてるのかと突っ込みをしたくなるほどの馬鹿っぷり。
どこに隠し持っていたのか、リナはスリッパを取り出しガウリイをどついた。


「ねぇ、リナ」


「ん?」


「ここに到着するには、どれくらいの時間に出発すれば間に合うの?」


次の目的地である町を指差しては問い掛けた。
肩にかかる程の長さのの髪が、首を傾げる仕草にあわせてサラリと流れた。


「そうね……」


「余裕を見て、早朝に出るのがいいかと思いますよ」


考えるリナに変わり即座に意見を出したのはゼロスだった。
その言葉にリナは一瞬視線をそちらに向け、再度地図に目を落とす。


「……そうね ゼロスの言うとおりかもしれないわ」


コクンと頷き、その計算に同意した。
そして全員で顔を見合わせ頷きあうと、それぞれ席を立ち部屋へと戻っていった。











to be continued..................





出発までの話、ということで。
いや、本音を言うと前回の話で夜なのにいきなりリナがガウリイ達に話してくるって飛び出してったので「ヤバイ」と思い、その言い訳話に……(うわ)
しっかしどんだけ遠回りしてたの?という疑問が。(笑)






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