「ちょ、ちょっと待って……ゼ、ゼロス??」


ゼロスのいきなりの発言に、は戸惑うばかり。
驚きで大きな声を上げた瞬間にゼロスの手がの口から離されたために、そんな問い掛けを向けられたのだ。
『脱いでください』なんて言葉に、おいそれと返事ができるはずがなかった。


「今……なんて言った?私の聞き間違い?」


どうしても信じられなかった。
だって、離れた場所に居るとしてもリナ達が近くに居るのだから。


「聞き間違いではないと思いますよ 僕は『脱いでください』と言ったんですが?」


「──っ」


やはり聞き間違いではなかった。
再度言われなおされれば、顔をボッと赤く染め上げる


さん?」










RECOLLECT 第十八話










「い、いくらなんでも……それはちょっと……」


恥ずかしいと口ごもってしまう。
ゼロスの考えていることとの考えていることが、明らかにすれ違っているのが分かる。


「もしかして、誤解してませんか?」


首を軽く傾げれば、おかっぱの髪がさらりとなびく。
その様子を見て、は同じように首を傾げた。


「誤解?」


「変なこと──いえ、怪しいことをするわけじゃないですから」


目の前に座り込んでいるゼロスの顔をジッと見つめる。
いつものニコ目のゼロス。
けれど、その口調も雰囲気も真剣そのもので。


「……分かった と、とりあえず……他のみんなに見られないようにしてもらわないと……」


離れていても、二人のことが見える範囲には居るリナ達。
いくらなんでも、素肌を他の者に見られるのは恥ずかしい。
それは、今目の前に居るゼロスが相手でも同じこと。


「そうですね……それじゃぁ、ちょっとここで待っててくださいね?」


そういうと、ゼロスは立ち上がった。
くるりと背を向けると、少し離れた場所で待機するリナ達の下へと歩みを向ける。



ああ……何でこうなるのかな?
ゼロスに素肌を見せるとか……うわ……想像したら恥ずかしくなってきたよ……



カァッと熱くなる顔。
これから自分はとんでもないことをしようとしてるんじゃないかと、考えはまとまらない。



……し、下着姿でもいいんだよね?



脱いでくださいとしか言わなかったゼロス。
けれど『裸になってください』と言ったわけじゃないのだから下着姿でもいいのだろう。
というか、下着姿でも恥ずかしいというのに裸となれば、それはもう頷くことも出来ない。


「おやおや 随分と百面相をしてますねぇ」


くすくすと笑った声が頭上からかかった。
そこには、先ほどリナ達の下へと向かったゼロスの姿があった。


「リナさん達には少し二人きりになりたいと伝えてきました
 何を考えたのか、ニヤニヤしていましたが……まぁ、最終的には二人きりになれたのでいいとしましょう」


そういうと、またゼロスはの前に座り込んだ。
地面に膝をつき、閉じられていた瞳をゆっくりと開いた。
細長く鋭い瞳が、を見つめる。


「ええと……」


「はい」


「脱ぐ、から向こう向いてて?」


「そうですね、いくらなんでも見られるのは嫌ですよねぇ」


ああ、と思い出したように呟くと、ゼロスは背を向けた。
顔を赤く染めながら、は自分の衣服に手をかけ、ゆっくりと脱いでいく。


「……こ、これが限界、だよ……」


その言葉をキッカケにゼロスはの方へと向き直った。
視界に入ったのは下着姿で恥らうの姿。
ゴクッと生唾を飲むほどに、ゼロスの瞳には美しく移った。



惚れた弱み、と人間は言うんでしたっけ?



内心、そんな事を思いながらハハハと笑った。
好きだからこそ、そんな姿を見れるのは嬉しくも思う。
けれど照れもし、息をも呑むほどだ。


「それだけ素肌を出しているなら、十分ですよ では、始めましょうか」


人差し指を、ゆっくりとの素肌に押し当てた。
ゼロスの体温が指先を伝わりの肌に届く。


「──っ」


ぴくり……

ゼロスの指先が肌に触れた瞬間、は身体を強張らせた。
変なことをするわけじゃないと分かっていても、素肌に直に指が触れれば反応してしまう。


「そう硬くならないで下さい そんなに意識するようなことじゃありませんから」



そう言われても、意識せずには居られないよっ



ゼロスの笑った言葉に、はそんな風に内心突っ込みを入れた。
同性ならまだしも、異性なのだから、ゼロスは。
そんなことを考えている間にも、ゼロスの指はの素肌を撫でるように走る。


「……はい、これで大丈夫です」


「え?」


そう言われても、ゼロスが何をやっていたのか全く分からなかったは疑問の声を上げた。
今の間にいったい何をしたというのか。


「少々さんの身体に結界を張らせていただきました」


五芒星の魔方陣のような模様が、ゼロスが意識をした途端にの素肌に浮かび上がった。
赤紫色がかった模様が、びっしりと。


「これを描くのに脱いでって言ったの?」


「まぁ、そんなところですね さんの体内にあるものを封じるにはこれしか思いつきませんでしたから」


そういいながら、脱ぎ捨てられていたの服を集めるゼロス。
それをス……とに手渡した。


「あ、ありがとう……」


それを受け取ると、自分が今どんな姿をしているか再確認してしまう。
カッと頬が熱くなり、ゼロスを真っ直ぐ見つめられない。



ド、ドキドキする……



うるさい心臓の音を聞かないフリをするように、は渡された服に手を通した。
シュルシュルと布が擦れる音が響くなか、ようやくはその素肌を服の内に収めることが出来た。


「出てこようとすれば、その結界が効くと思いますから」


「……う、うん」


ゼロスの言葉に、それしか返せない。
パッとすぐにゼロスから視線を逸らし、辺りを見渡す。


「リナ達は?」


「それなら向こうに──」


「そうなの?じゃ、じゃあ、早く行こう!」


まるで話を逸らすように、まるで今の出来事を霞ませるように、はリナ達の元へと駆け出した。


「おやおや……よく分かる反応ですねぇ」


そんなの行動に、ゼロスはくすっと笑みを零し──先に駆け出したの後を追った。










to be continued................




ここからゼロスを意識し始めてくれれば嬉しいな……と思う。
これで意識しなかったら、どんだけ鈍いの!?というかどんだけ恥じらいがないの!?という事に陥ってしまう……(笑)






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