「見えてきたわね」


ポツリと呟いたリナの言葉に、はリナの視線を追うように前を見つめた。
開けた道の先に見える町は──


「クレスケレスよ」











RECOLLECT 第十九話











「あれが……」


見覚えがあるような、見覚えがないような。
そんなことを思いながら、はクレスケレスを見つめた。


「といっても、もう少し距離はあるけどね」


肩をすくめ笑うリナ。
開けた道の先に見えていたとしても、すぐに入り口に到着するわけじゃなかった。
門をくぐったりしなければならず、それから先にようやくクレスケレスへの入り口があるわけだ。


「それでも、あと少しって事だよな」


「そうですね!長い道のりでしたが、ようやくここまで来ましたねっ!」


ガウリイの言葉に拳を握り締め、アメリアが強く呟いた。
キラキラと、アメリアの周りに星が飛んでいるようにも見えるほどに。


もあれから体調も大丈夫みたいだし……」


「ああ、ゼロスが何をしたのかは分からんが……大事にならなくて良かった」


「そうだなー あの時はどうなるかと思ったぜ」


ちらりとへ視線を向けるリナ。
ポツリと呟いた言葉は安堵を含んでおり、その言葉にゼルガディスもガウリイも頷いた。
心配だったからこそこうして気に掛け、ホッとする。


「あの時は心配掛けちゃってごめんね」


「いいんですよ、さん!あの時は仕方なかったんですから!」


申し訳なさそうにこうべを垂れるに、明かるい声が飛ぶ。
そんな暗い気持ちを吹き飛ばすくらいに気持ちよい、アメリアの言葉。


「そうよ、 あたし達は仲間なんだから、いいのよ」


「その通りですよ、さん 折角リナさんがああ言ってくれているわけですからねぇ」


どんどん心配掛けちゃってください、とか言い出しそうな顔をしているゼロス。
ふいに、から笑みが零れた。


「うん……ありがとう」


「っと、門が見えてきたがあれかー?」


のお礼と交差するように上がったのはガウリイの声だった。
視線を向けるとピタリと足を止めて、その先にある大きな門を指差していた。
そこは、クレスケレスへの入り口へと続く門。


「おや、もう着いてしまったんですねぇ」


ゼロスがそう言うという事は、つまりはガウリイの予想は的中したという事。
リナはその言葉を耳にすると、ガウリイへコクンと頷き返した。


「じゃあ、あと少しって事ですね!さん、頑張りましょう!」


「え、あ、うん」


アメリアの瞳はやる気の炎で燃え上がっていた。
何を頑張るというのかが分からないが、はそれでも頷いておいた。
ここまで一緒に頑張ってくれたのだから。
あと少しで、目的地へ入るのだから。


「…………」



なのに、どうして胸騒ぎがするんだろう……



アメリアからついっと門の方へと視線を向けた。
門を抜けたら、まるでよくない事が待っているかのように胸が痛いくらいに脈打つ。


「戻ってきたな……」


「……そうね」


ゼルガディスの小さな呟きに、リナは間を空けてから答えた。
リナ達にとっては忌むべき出来事が起きた、いい思い出のない場所。


「置いてくぞー」


「あ、ガウリイの癖に生意気!」


先の方から聞こえたガウリイの声に、リナは唇をへの字に曲げた。
それから慌てて地面を蹴って駆け出した。


「ほら、さん 置いていかれますよ、行きましょう」


「……うん」


手を差し出すゼロスに一度視線を向けて頷く
けれど、すぐにあの森での出来事を思い出し顔を真っ赤に染め上げた。
素肌を見られた相手なのだ。



うわ……どうしよう……
意識しはじめるとゼロスの顔が見れないよっ



俯いたまま差し出されたゼロスの手を取る。
するとゼロスはの手を握り返し、リナ達の方へと歩き始めた。


そうだ……そのまま進むといい


嫌な声が、また響く。
あの時感じた頭痛はなくても、声だけは相変わらず響いてくる。



これが……ゼロスの言ってた、私のうちに居る者??



空いた手で胸元の服をギュッと掴む。
そして、の足はピタリと止まった。


さん?」


「ねぇ……私の中に居るのって……何?リナ達は知ってるの?」


その問い掛けに、ゼロスは言葉に詰まった。
すべてをに話していなかった。
もちろん、の中に居る者に関わりを持つリナ達にだって。


「ゼロス、聞いてる?」


言葉を催促するの声。
けれど、喉はまるで縫い付けられてしまったように声がそこから出てこない。


「…………」


掠れた、息だけが口から出てきた。
それと同時に、ゼロスの閉じられた瞳がゆっくりと開かれる。


「リナさん達も知りません 知っているのは……僕だけです」


ゼロスの真面目な声が、風でそよぐ草木の音に混じってよく響いた。








to be continued..................




そろそろ核心部分に。
そして、きっと読者の方も分かっているだろうと思うことをそろそろ暴露したいと思います。(ゼロスが)






RECOLLECTに戻る