「リナさんが、報酬目当てでこういう事をするなんて珍しいですよね」


アメリアの言葉に、リナは苦笑した。
何故、みんなは不審に思わないのだろうと。


「似てるのよ────……が…………」











RECOLLECT 第二話











「似てるのよ────……が、アイツに」


その言葉に、アメリアも含めその場に居た三人が「あ」と声を漏らした。
言われて初めて、気づいた。
あの日の出来事を。
まだ、そんなに日も経っていない"あの出来事"を。


「名前も知らない、あの魔族か」


「ええ」


「言われてみれば……確かに似てるかもしれんな」


「少しだけ違うくらいですもんね」


思い返す魔族の姿は、とは少しだけ違っていた。
それでも、魔族を思い出すほどに似ていた。


「だからですか?彼女の目的地でもあるクレスケレスまで同行すると言ったのは」


「ゼロス……」


突如現れた姿に、リナは冷静な声を漏らした。
目の前に居るゼロスはニコニコと、何を考えているか分からない表情を浮かべていた。


「遠巻きながら、一部始終を見させて頂きましたが……確かに彼女はあの魔族に似ていますね」


閉じていた瞳を薄らと広げた。
そこから見える瞳の色は、とても冷たく見えた。


「リナさん方にとって……あの魔族は天敵でしょう?」


「だからよ だから……の動向を探って、関係ない人間かどうかを判断しようかと思ってね
 タイミングよすぎなのよ……あの事件から数日しか経っていないのに、あの魔族に似たが現れるなんて」


その言葉に、その場に居る全員が同意だった。


「……復讐でもしようというんですか?」


リナの言葉はまるで"復讐"を企む者のものにも聞こえた。
しかし、そんなゼロスの問いかけにリナは苦笑を零した。


「まさか そんな外道な事に足を踏み込むあたしだと思う?」


「いいえ」


「あいつはあたしを狙ってるのよ 野放しにしておいたら……また何が起こるか」


「なるほど そういう事でしたか」


リナの答えにゼロスは納得した。
復讐でも何でもなく、リナ自身にとって害となる要素を滅却するために。

リナは、襲ってきた魔族を倒そうと考えていた。


「それで、ゼロスは一体何をしに?
 というか……あたし達を襲った魔族を知ってるわけ?」


スルーして話していたが、今更思う事。
リナ達が襲われた時、その場にゼロスは居なかったのだから知らないと思うのは当然だ。


「ああ 話していませんでしたよね」


「何を」


リナのツッコミに気をよくしたようにニッと笑みを浮かべ、ゼロスは人差し指を口元に添えた。
そして、開いていた瞳をゆっくりと閉じていつものニコ目を作る。


「いえ、やはり自分の玩具に手を出されては面白くないでしょう?」


「……誰が玩具だってぇ〜?」


しかし、その言葉は何とも魔族らしい。
ギロっとゼロスを睨みながらも、リナは半分諦めかけていた。

魔族にとって人間なんて玩具に過ぎないのは、リナだって分かっていた。


「そりゃ、勿論リナさん方ですよ ですから、その魔族には僕からもお仕置きをしたいんですよ」


「そりゃ何とも御苦労な事だな」


ゼロスの言葉に溜め息を吐くゼルガディス。
ゼロスは別に何とも思わないのか「いえいえ」と軽く返すだけだった。


「つまりは、私達とゼロスさんは目的は同じ────……という事ですよね?」


「ええ そうなりますね」


アメリアの問い掛けに、ゼロスはコクリと頷いた。


「それで、ゼロスはどうするわけ?
 まさか、一緒に旅をする────……なんて言いださないでしょうね?」


「はっはっは なんの冗談を言っているんですか?リナさん
 僕が人間と共に旅なんて……するわけないじゃないですか」


リナの問いかけにゼロスはケタケタと笑った。
魔族は空間移動が出来るのだから、人間と共に旅をする必要もないだろう。

勝手にどこかへ行き、勝手にリナ達の前に姿を現す事も出来る。


「その方が俺達にとっても有り難い」


堅いゼルガディスの言葉が、飛び出た。


「まぁ……適度に顔は出しますよ もちろん……何かあれば駆けつけます
 面白そうですからね♪」


「……ほんと、魔族ね」


「ええ、魔族ですから」


にこにこと笑うゼロスから、何を考えているのか全く読み取る事が出来なかった。
そんなゼロスが回りをくるりと見渡すようなそぶりを見せた。


「ゼロス?」


「それで……その、クレスケレスへと連れて行く事となった人間────さんと言いましたっけ?
 彼女はどこに?」


眉を顰め、訝しげに見つめるリナにゼロスは問い掛けた。
場所は宿屋の一階の酒場。
一つのテーブルをリナ達一行が占領する中、ゼロスはの存在を見つける事が出来なかった。


「ああ なら部屋で休んでるわ
 結構な怪我だったからね……大事をとってね」


リナの言葉に、一瞬だけゼロスの瞳が開いた。
しかしすぐに閉じられ、リナ以外のメンバーは誰一人として気付いていなかった。



怪我……ですか



何か思い当たるのか、ゼロスはそう心のうちで呟くと。


「その部屋、どこか教えてもらえますか?」


「……に会うの?」


「姿を目に留めるだけですよ」


リナの問いかけに、くすっと笑った。
リナはゼロスにの休んでいる部屋の番号を伝え、立ち去る後姿を見つめていた。











「……ここですか」


ドアノブに手を掛け、回す。

がちゃ……


「鍵はかかってるようですね さて……」


そう呟くと、ゼロスは部屋のドアの前から────廊下から姿を消した。
次の瞬間、ゼロスが現れたのはの眠る部屋の中だった。


「……本当に、何度見てもソックリですね」


スッと、閉じた瞳を開くと眠る姿を目にとめた。
魔族らしき気配も全く感じ取れなかった。


「人間……でしょうか
 ですが……どこか引っかかるんですよね」


うーん、とゼロスは首を傾げた。
魔族の気配は感じないものの、人間と言い切るには何かが引っかかる。


「まぁ……記憶を取り戻すようクレスケレスに戻れば……何かが分かるでしょう」


共にずっと旅をするわけではないが、それでもその目的に乗ずる気ではいたゼロス。
ふ、と笑みを浮かべ眠るに意識を向けた。


「……ん な、ぜ……私、が……」


さん?」


口から洩れた声はすぐにかき消えた。
名を呼び、近づくが聞こえてくるのは静かな寝息だけだった。



寝言ですか……



再び規則正しく上下に動く胸を見つめ、寝ている事を再確認。
ゼロスはまた、シュンッと姿を消し部屋の中から忽然と存在を消した。












to be continued...........................




この話では、リナ達とゼロスの目的を明確にさせようと思いました。
ので、ヒロインはおやすみ中という事で……(笑)






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