「リナさん達も知りません 知っているのは……僕だけです」


そう呟いたゼロスの声が、微かに震えて聞こえたように感じた
気のせいだろうかと思うのに、気のせいじゃないと心の奥で攻め立てる。


「…………」


無言のまま、を見つめるゼロス。
その視線が、に視線を逸らすことを許さないといわんばかりで。
そんなゼロスは内心、信じたくないという思いでいっぱいだったことに、は気付く術など持ち合わせていなかった。










RECOLLECT 第二十話










さんは……知りたいんですか?」


真っ直ぐに見つめてくるゼロスの瞳。
は視線を縫いとめられたように、逸らせずにいた。
これ以上踏み込んではいけないと、警戒音が頭のいたるところで鳴っているようにガンガンとする。
それなのに踏み込もうとしてしまう。
聞こうとしてしまう。


「……知りたい だって、これは私のことだから」


それはもっともな言い分だった。
そう言われてしまえばゼロスだって駄目とは言えない。
確かに、この事実は当事者であるが知っていなければならないことかもしれないのだ。


「──……覚悟は、あるんですね?」


「もちろん、あるよ 恐怖はあるけどね、どんな事実が隠されてるんだろうって」


恐怖がないものなんていない。
未知なるものに、恐怖を感じないなんてきっとありえない。
見えないものだからこそ、恐怖を感じ過度な妄想をし余計に恐怖を煽るのだから。


「……そうですか」


短いゼロスの返事だった。
それから小さな間を空けてから「分かりました」とゼロスは言った。
その表情は、どことなくその回答は予想していたと言っているようで。


「リナさん達には──……話しますか?」


「うん 隠し通せるものでもないだろうし、隠してるのは……少し後ろめたい」


無関係じゃないリナ達。
そして、ずっとここまでを助けてくれたリナ達。
隠し事をしている事に何も感じずには居られないほどに、絆が生まれていた。


「では、クレスケレスに到着する前にリナさん達を呼び止めないといけないですねぇ」


「あ!そっか、先に行っちゃってたんだったよね!!」


ゼロスの言葉でハッとした。
視線を上げたの視界に映ったのは、すでに先を行く四人の姿だった。


「リナ、待って!!」


「え?」


の叫ぶような声に、リナは立ち止まった。
それに気付いた三人も、数歩遅れて立ち止まり振り返った。


「どうしたの?


問いかけるリナはに手招きされるままに戻ってきた。
折角進んだ道を、の元へと引き返してくる。


「ちょっと……ゼロスの話を一緒に聞いて欲しくて」


「ゼロスさんのですか?」


の言葉にいち早く反応したのはアメリアだった。
首を傾げ、大きなつぶらな瞳を不思議そうに和らげた。


「いったい何なんだ?」


「リナさん方の追っている魔族のことについてです」


「「「「…………」」」」


ゼルガディスの問い掛けに、間を空けずにゼロスは答えた。
感情の伴っていないような、淡々とした口調で。
リナ達は『魔族のことについて』という言葉にピクリと反応を示し、全員が真剣な面持ちへと移ろった。
あの、いつもはおちゃらけてポケーっとしているガウリイでさえも。


「どういうこと?ゼロス」


「それをこれから話すんですよ、リナさん」


リナの真剣な声はとてつもなく怖いほどだった。
はゴクリと息を呑み、ゼロスを見つめた。
今の話で大体の見当はついた。



リナから聞いたあの魔族の話……あの魔族が私の中に??



そう考えることしか出来なかった。
それ以外にたどり着く答えが、にはなかった。
今の話の流れで、『の中にいる者イコール、リナ達の追っている魔族』と答えを出すのは自然な流れだから。


「覚悟はいいですね?」


ゼロスの問い掛けに誰も声を出して有無を言わなかった。
ただ静かに頷き、発されるであろうゼロスの声に耳を傾けるだけだった。











to be continued.................




いいところで次回へってことで。(^-^*)






RECOLLECTに戻る