どうして……そんな辛そうな顔をするの?
私は……あなたの敵なのに

触れる唇から流れ込む温かさが……凄く心地よくて、凄く悲しかった












RECOLLECT 第二十六話












「んっ……」


強引に奪われた唇。
なのに、凄く心が時めいていた。
このまま続いて欲しいと、心が叫んでいた。



駄目……抵抗、しなくちゃ



そう思うのに、身体が思うように動かない。
傷を負っているからか、抵抗したくないと思っているからか。

たぶん、どちらもあるのだろう。


「抵抗、しないんですか?」


ゼロスの問い掛けには答えた。
ただ、ジッとゼロスを見つめるだけ。
何も言わない。
いいも、悪いも、続けても、やめても。
何の意思も、見せない。


「どうして……あなたはそんなに頑ななんですかっ」


ぎゅ、とを抱きしめた。
優しく、いたわる様に。


「なぜ、僕に心を開いてくれないんですか?僕が本当に嫌いなんですか?」


そんな事はないと分かっているゼロス。
けれど、今のの態度を見ていると、そう思ってしまう。


「私を……滅ぼして」


ようやく口にした言葉は、そんなものだった。
それだけだった。



私に許されるのは、その言葉だけ
私は……生きてちゃいけない
生きていたくない……傷つけたくない……



それは、独りよがりな考えだっては気付いていなかった。
誰も、と争おうと考えている者はいなかったのだから、傷つけることだってない。
生きて、犯した過ちを背負うことだって出来るのに。


「嫌です」


ゼロスは、の言葉を強く拒否した。
の願いを裏切る言葉に、目を見開いた。
『なんで?』と問いた気な視線がゼロスに突き刺さる。


「どうして……どうして滅ぼしてくれないの!?」


「僕は今、『嫌です』と言いましたよね?」


「──っ」


それが理由だと呟くゼロスにの息が詰まった。



どうして……どうして滅ぼしてくれないのっ
私は滅びを望んでいるのにっ



どんなに願っても、どんなに望んでも滅びは訪れない。
自分の手で断ち切ることも、誰かの手で断ち切ってもらうことも。


「なぜさんは、滅びを望むんですか?」


「……え?」


まさかの問い掛けに、素っ頓狂な声を上げていた。



なぜ?



そんなことを聞かれるとは思っていなかった
きょとんとした様子でゼロスを見つめた。


「なぜって……私はみんなと戦いたくない なにより……みんなを──……ゼロスを傷つけたくないから」


「では、問います なぜ戦うこと前提になっているんですか?」



あ……



ゼロスの問い掛けで気付いた。
はずっと『戦わなきゃいけない』という思いを前提に置いて考えていた。
そういう風に考えていたのなら、戦いたくないから滅びるという考えに至るのは容易に分かる。


「リナさん達も、僕も、もうあなたと戦う気は全くありませんよ」


言い切りの言葉だった。
ゼロスの言葉に、胸がギュッと締め付けられる。
ずっとずっと滅びなきゃと思っていたからか、凄くゼロスの言葉がにとって救いだった。



ねぇ、ゼロス……
それじゃあ、私は……



「生きていて、いいの?」


の問い掛けに、ゼロスは何も答えなかった。
けれど、言葉の変わりに優しい笑顔を。
そして、柔らかな唇がの唇に押し当てられた。


「んんっ……ふ、う……」


唇を割って舌を進入させ、の舌を堪能するゼロス。
絡めとって、離れて、探すの舌から逃げては──また絡める。


「ん、ぅ……は……」


どんどん息は苦しくなって、瞳はとろんとしていた。
頬は蒸気し、胸は早鐘を打つ。


「……これが僕の気持ちです」


唇を離し、名残惜しそうに銀の糸が引く。
唇についた唾液を拭うようにゼロスがペロリと唇を舐め、呟いた。



ゼロスッ



その行動に、その言葉に、頬が染まるのが分かった。
カッと頭が、顔が熱くなった。
ごしごしと唇を手の甲で拭きながらも、ゼロスを見て──恥ずかしそうに視線を反らす。


「これでも、あなたは滅びを望むと言いますか?」


その言葉にハッと視線を上げた。
目に留まるのは、凄く悲しげな瞳の色をしたゼロス。
だから、胸が凄く、締め付けられた。



──私、は、もう……っ



ふわりと精神世界面(アストラル・サイド)の空間に浮かび、そのままゼロスに抱きついた。
まるで、今のキスで削られていた精神体を補充されたかのように──凄く身体が軽かった。


「私は……まだ、ゼロスのそばにいたいっ」


呟き、口付けた。
深く深く、角度を変えて、ゼロスからではなく今度はから。


「んっ」


だから、ゼロスの驚いたようなくぐもった声が聞こえて嬉しくなった
唇を離し、角度を変えてまた唇を塞ぐ。
愛しい愛しいと、何度も何度も口付けで伝えていく。


「ん……ふぅ、んっ……」


けれど、いつの間にか主導権はゼロスに移っていた。
の頭に手を沿え、離れないように強く抑え深く口付ける。



ゼロス……好き、大好き
魔族にこんな感情いらないけど……魔族にとって、こんな感情危ないけど……
それでも、私はあなたをっ



ゆっくりと、の身体はゼロスとともに精神世界面(アストラル・サイド)で押し倒されていった。
地も天もないここで、押し倒すという行為自体あまり意味はないとしても。
それでも、ゼロスはゆっくりとの身体を押し倒し、覆いかぶさった。


「愛しています」


「私も」


微笑み、どちらからともなく口付けた。













to be continued.....................






とりあえず、もうクライマックスかなって感じで。
一応ちょい危ないところで執筆停止で、次回に繋ぐと。(笑)
甘く書けたらいいなと思いつつ、私って結構甘いよりも切な系にいく傾向があるのかな?
これって甘い?それとも切ない?前半は切ない気がするんだけど……(^ ^;)






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