「リナはクレスケレスまでの道順を知ってるの?」


の問い掛けは、朝食時の事だった。
宿泊した宿の食堂で、ふと食事をする手を止めて問い掛けた。


「え?ええ どうしたの?」


「ううん 知ってるなら……安心したよ」


「もしかすると、スムーズにクレスケレスに迎えるかどうかを心配していたのか?」


の物言いにゼルガディスが問い返した。
の言葉から推測した問いだったのだけれど。


「うん やっぱり……ずーっと厄介になるのは申し訳ないしね
 知らなくて……なかなか着かないようなら、一人でどうにかしようと思って」


「…………」


「リナ?」


の言葉に、無言のまま視線を向けるリナ。
その視線の意味も分からず、ただ何も返事をしないリナには眉を顰めて首を傾げた。


「あ、ああ!そんな事気にしなくていいのよ!」


「そうですよ!それに、分からない訳じゃないんですから、そんな事は余所にほっぽいちゃいましょう!」


リナとアメリアの迫力のある言葉には苦笑を浮かべた。
どこまでも親切なリナとアメリアに、は何の疑問も抱く事はなかった。


「ありがとう、凄く助かるよ」


微笑み、そう告げるとまた食事の手を動かし始めた。












RECOLLECT 第三話












「空いてるお皿お下げしても宜しいですか?」


「ええ、お願い」


ウエイトレスの言葉にリナは軽く答え、テーブルの上に地図を広げた。


「リナ?」


にクレスケレスがどこにあるのか、一応説明しておくわ」


疑問に思っただが、リナのその一言で理解し頷き返した。
お願い、という雰囲気を醸し出して。


「今、ここに居るの イファーラ王国……分かる?
 そして……あたし達が向かうのは、ここ クレスケレス」


現在地と目的地を指差し、大丈夫かどうかをに首をかしげて問い掛けた。


「うん、大丈夫 結構……距離、あるんだね」


二つの地点の距離を見つめ、感想を述べた。
それは、二つの点を結びつけた一直線で見たもので、実際に道を進んだり、街に入ったり、道なき道を進んだりすれば、距離はまた変わってくる。


「まぁ……そうね でも、場所が分かっていれば、すぐよ」


リナの言葉には再度、頷くのだった。


「それより、もう身体は大丈夫なんですか?」


話に区切りがついたと判断したアメリアが、に問い掛けた。
首を傾げる様子に、は笑顔を返す。


「うん、大丈夫 まだ少しズキズキするけど……完全に治るまで────なんて言ってられないでしょ?」


「まぁ、確かにそうで────」


「大事を取って休んだ方がいいんじゃないでしょうか?」


の言葉にアメリアは頷き同意を口にしようとした。
しかし、その言葉を遮る声が上がった。

その場に居なかったはずの、第三者の声。


「ゼロス!!」


リナの驚きの声があがった。
パッとゼロスの方に視線を向け、『あ』と口を開ける。


「……ゼロス?」


全く知るはずもないは、その名前を口にして首を傾げた。
キョトンとした表情を浮かべ、リナとゼロスを交互に見つめた。


「あの……誰?」


「……ゼロス、よ ちょっとワケ有りで……たまーに、こうやって顔出す神出鬼没な奴だから気にしないでいいわ」


「そうなの?」


リナの紹介に、は一層不思議そうな顔をした。
どんな理由なのか、そして、なぜたまに顔を出す程度なのかと。


「ええ まぁ、貴方をクレスケレスに連れて行く事に完全無関係ってわけじゃないから……名前だけは覚えておいてあげて」


「あ、うん ええと……初めまして、ゼロス 私は────」


さんですよね?僕からすると、実は初めましてじゃないんですが……一応、初めましてと言っておきますね」


ゼロスの言葉に、意味が分からず眉を顰めた。
その表情に築いたアメリアが、くすくすと微笑んだ。


「?」


「昨日、さんが寝ている時にゼロスさんが様子を見に行ったんですよ」


アメリアのそんな説明で、は漸くゼロスの言葉の意味を理解した。
なるほど、と納得できる話だった。


「女性が一人で寝てる部屋に入るのは、いささか関心できないけどなー」


「それは俺も同感だな」


ガウリイの、のほほんとした言葉にゼルガディスも頷いた。
そんな二人の言葉に、ゼロスはただただ「あはははは……」と笑う事しか出来なかった。


「笑い事じゃないわよ?ゼロス あの時は平然と送り出したけど……
 言われてみれば、あまり褒められたことじゃないわね」


「魔族の僕としては、褒められない方がありがたいですねぇ」


リナの言葉に、ゼロスは嬉しそうに微笑んだ。
それこそ、魔族の性というものだ。


「……魔族?」


しかし、そんなゼロスの発言がの気を引く事になるとは誰も思わなかった。
けれど、良く考えればそれは当然なことだった。


「ああ、そうでしたね さんは僕が魔族だって知りませんでしたよね」


うんうん、と疑問そうな表情を浮かべるを見つめゼロスは笑った。
知らないのだから、気を引いてしまうのは当然だ。
知らないのだから、疑問そうな表情を浮かべるのは当然だ。


「……初耳だよ リナって、魔族と知り合いだったんだ?」


「知り合いっていうか……なんというか……変な縁があってね……」


なんとも言葉にし難い関係だったのは、今のリナの説明でよく分かる。
はそれ以上触れる事もせず「そうなんだ」と言葉を口にするだけだった。

聞いても、きっとリナは答えられなかっただろう。


「リナって、何気に凄いんだね 敵対しないで知り合いだって事は……やっぱりリナも強いの?」


「そりゃー、あたしは天下無敵よ〜」


の問いかけに、リナは気分良さそうに答えた。
しかし、その言葉も確かにその通りで誰も訂正する事はなかった。


「ま、リナの話じゃ故郷の姉さんには負けるらしいがな」


「ゼル!」


「いいじゃないかー、リナ 別に話しても減るもんじゃないだろ?」


話してしまったゼルに声を上げるリナ。
しかし、ガウリイはのほほんと笑い、リナを宥めた。


「減る!何かが減る!」


「リッリナさん、落ち付いて下さい!!」


わー、と今にも暴れ出しそうなリナを抑えつけるアメリア。
しかし、その表情はどこか楽しげだった。


「……楽しげな四人ね」


「そうですね」


「いつもこんな感じなの?」


「ええ 僕がいつ訪れても、こんな調子ですよ」


四人を見つめながら、のほほんと外野で会話をするゼロスと
その様子は仲睦まじい、そんな感じだった。
会って間もないはずなのに、どこか話しやすい何かを感じていた。


「こうやって……記憶があるっていうのは、昔を覚えてるから……羨ましいなぁ」


さん?」


「私……記憶ないから、昔の事覚えてないし……
 だから、知り合いに会ってもリナ達みたいに楽しそうにはしゃげない」


くしゃっと表情を歪め、羨ましそうにリナ達を見つめた。
その表情がどこか悲しげで、ゼロスはの横顔から視線を逸らせなかった。









to be continued.............




とりあえず、ゼロスの意識をヒロインに向かせるように仕向けてみましょうの巻。(ぉ)
どんな風に旅を続けさせて、どんな風にゼロスと絡ませようかなぁ……と悩みます。(';')






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