「そろそろ行くわよ」


リナの言葉には部屋から空を見上げた。
熱雲が、徐々に徐々に動き始めていた。


「でも、雨が降りそうだよ?」


「だからよ なるべく早く次の街へ着きたいのよ」


荷物を持ち、ドアの方へと歩みを向ける。
すでに他のメンバーは、一階に集まっているという。


「分かった 私もすぐに行くから、先に下に行ってて」


「OK」


の言葉にリナは親指をグッと立てた。









RECOLLECT 第四話









「お待たせー!!」


「遅いわよ」


階段を駆け降りるは、すでに待ちぼうけを食らい椅子に腰掛けているリナ達に手を振った。
肩を竦めるリナに「ごめん」と謝りながら、辺りを見渡す。


「あれ?ゼロスは?」


「言ったでしょう?ワケ有って、たまーに顔を出すって」


「ああ、そういえば いつも一緒に居るわけじゃないって話だったもんね」


リナの答えで、ようやくハッとした。
そんな事を言っていた事を、はすっかり忘れていたのだ。


「ほら、行くわよ」


「あ、でも……お会計……」


「お金、持ってないでしょう?」


歩み出すリナに駆け寄りながら、宿代の事を思い出した。
クレスケレスに連れて行ってもらう約束だけど、お金などなく。
リナの指摘にはただ頷くだけだった。


をクレスケレスに連れて行くって言いだしたのはあたしだし、宿代は気にしなくていいわ
 どうせ、みんなの分もあたしが払ってるんだしね」


チラリとアメリア達に視線を向け、苦笑を浮かべる。
リナの言葉に何も言えず、ガウリイもアメリアもゼルガディスもただ苦笑を浮かべるだけだった。


「それじゃぁ……お言葉に甘えさせて貰うね」


「そうしてくれると嬉しいわ」


ニッコリと、微笑み合った。

カランカランカラン


「ありがとうございましたー!」


扉を開け、外へ出ると鳴る鈴の音。
その音に反応したお店の人が、中から出ていく達に声を掛けた。

バタン……

そうしてドアの閉まる音と共に、達は宿を後にした。











「ええと……ここは、次の街に行くのに街道に沿って行った方がいいわね」


地図を確認しながら、リナはそう言葉を口にした。


「こういう街道って……途中に宿とかってあるの?」


「たまにあるわね」


「なきゃ困るしな」


の問い掛けに答えるリナと、肩を竦めるゼルガディス。
現在地から目的地までの距離が短ければ必要ないかもしれないけれど、長い場合はゼルガディスの言うとおりなければ困るだろう。
それは、道の距離によって異なるようだ。


「そっか……雨、街に着くまで降らなきゃいいね……」


ポツリと呟きながら、は静かに視線を空に向けた。
青空が、徐々に灰色の雲に覆い隠されていく。


「そうですね 雨が降っては……雨宿りをするか、どこかに泊まらなくちゃいけなくなりますもんね」


同じくアメリアも空を見上げ、肩を竦めた。
吐き出す息は重みを帯び、それが溜め息だとよく分かるものだった。


「雨が降ったらすぐに泊まるんだろー?リナ?」


「そうね 濡れて先に進むほど無謀なことはないわ 風邪も引きたくないしね」


ガウリイの問い掛けに、リナは静かに肯定の言葉を口にした。
雨が降っては視界も狭まり見辛くなり、何より体力的に消耗が激しくなる。


「それは俺も同感だな」


「私も風邪は引きたくないな……」


ゼルガディスと顔を合わせて頷き合う
その様子を見て、アメリアも「私もです!」と挙手をした。

ポツ……


「ん?」


「どうしたの?ガウリイ」


立ち止まり空を見上げるガウリイに、リナは疑問そうな表情を浮かべた。
振り返りガウリイを見つめると、首を傾げた。


「ああ いや……今、何か冷たいものが顔に落ちたような気がして……」


ポツポツ……


「……気の所為じゃないと思う」


同じく、冷たいものを感じたが立ち止まり空を見上げた。
その冷たいものの正体が、よく分かる。


「────……雨、だな」


「悠長にそんな事を解説してる場合じゃないわ!!」


呟くゼルガディスに突っ込むリナ。
慌てて走るように促し、駆け出した。


「どうするんだ?リナ」


「どこかに宿でもあるの?」


「そんなの、見かけませんでしたよ?」


問い掛けるガウリイににアメリア。
しかし、リナはひたすら駆けていた。
まるで、どこかに目的地があるかのように。


「どうするつもりだ?リナ」


「家よ!宿がなければ、最悪誰かの家!一日くらいなら泊めてもらえるかもしれないわ!」


前を見つめ走りながら、ゼルガディスの再度の同じ質問に叫んで答えた。


「リナ!もう少し走った先に家がある!」


「え?」


前を指差すガウリイの言葉に反応し、視線を向けた
しかし、その瞳には何も映しだされず首を傾げた。


「ガウリイさんは脅威な視力を持ってるんです 私達に見えなくても、ガウリイさんが言うのであれば、きっとそこにあるんですよ!」


少し先を走りながらも、ガウリイの言葉が信憑性を帯びている事を伝えるアメリア。
はその事実に驚き、目を丸くしていたけれど。


「なら、そこを目指すしかないよね」


「ええ、そうね」


の言葉に、リナも同意した。
すると、全員の走るペースがまた一段と速まった。












「すみませーん!」


家の前に辿り着いた達。
門前で声を上げ、家の主を呼び出そうとしていた。


「はーい どうし……まぁ!びしょ濡れ……どうしましたの?」


出てきたのは一人の女性。
クルクルに巻いた髪の毛が、上品さを醸し出していた。


「急に雨に降られまして……迷惑でなければ、一夜ここで明かさせて頂きたいのですが……」


「ええ、構いませんわ ささ、早く早く このままでは風邪をお召しになってしまいますわ」


アメリアの説明にコクコクと頷きながら、女性は家の中へと案内をし始めた。
ペコリと一つ頭を下げると、リナを筆頭に女性の後を追った。










to be continued..............




雨イベントー!
何か起こるか、何も起こらず旅再開か……それは私にも分からな────い♪






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