「どうする、リナ?宿……なさげだぞ?」


町に着き、宿を探していたリナ達一行。
しかし一向に見つからず、公園の広場に集まった面々が告げたのは宿がないという事実だけだった。


「手分けして探しても見つからないって事は……本当にないわね」


「あまり旅人を歓迎しない土地なんでしょうか?」


肩をすくめるリナに、アメリアはあたりを見渡し呟いた。
突き刺さる住民の視線が痛い。












RECOLLECT 第九話












「ねぇ、リナ みんなの視線がさ……痛いんだけど」


「ええ あたしも感じてたわ」


ブルブルッ

微かに身震いをし、その異様さを伝えた
しかし、そのことにリナ自身も他の皆も分かっていたようだ。


「旅人さん 泊まる場所をお探しかな?」


声を掛けてきたのは、金髪の似合う美形な青年だった。
にっこりと微笑みを浮かべ、軽く首を傾げる。


「ああ でも、宿がなくてな」


答えるゼルガディスの言葉に、それまでリナ達を遠巻きに見つめていた住民がザワザワと騒ぎはじめた。



……一体、何?



分からない異様さに、少なからず恐怖を感じた
そんなの肩にゼロスが手を乗せ、にっこりと微笑んだ。


「大丈夫ですよ、さん」


その言葉だけでも、十分心が安堵した。


「この町にはあまり旅人が来ないのでね、宿がないのだよ
 よかったら、私の家に泊まるかい?」


その言葉をきっかけに、回りの住民もリナ達の方へと駆け寄った。
男は女に、女は男に声を掛け躍起に自分の家に泊まらないかと誘ってくる。


「それじゃぁ……あなたの家に泊まらせてもらおうかしら?」


リナは最初に声を掛けてくれた青年に、首をかしげて承諾を得ようとした。
しかし、青年は笑みを浮かべたまま一つ頷くも、少し考えたような表情を浮かべた。


「ああ、一つ言い忘れていたよ 一つの家に泊まれるのは一人だけだよ
 この町の民家は小さいんでね……泊められる人数が限られるのだよ」


そう言われ、はあたりを見渡した。
確かに、目の前の青年の言うとおりどの家も小さい。
一人暮らしに向いた大きさだった。


「全員バラバラ、って事ですね」


「そうなりますねぇ まぁ、僕は家に泊まる必要もないのですがね」


アメリアの言葉にゼロスがコクンと頷いた。
人間と違ってゼロスは別に泊まらなくても大丈夫で、肩を竦め苦笑した。


「では、おのずと泊まる家は五つ……という事になるね
 誰か、あと四人ほど泊まらせてもいいという者はいないかね?」


あたりを見渡し、住民に声を掛けた。
すると、男二人に女二人が挙手した。
まるで、さっきの躍起とした雰囲気はなかったかのように計四人だけが。


「では、君は私の家に泊まりに来るといい 私はザラだ」


そう言い、リナに声を掛けたのは最初に誘ってきた金髪の青年だった。
ザラはにっこりと微笑むと、リナに家のある場所を簡単に説明した。


「そして、金髪の君は……そうだね、サラの家に泊まらせてもらうといい
 フードの君は、シータ 青髪の君は、ヴァオ」


さくさくと、指示を出していく様子に異様な空気を感じた。
最後に視線を向けられたは、ドクンと嫌な感じを受けた。


「君は、ギルだ それぞれ案内してもらうといい」


そう言うと、もうすぐ日も暮れるという事でそれぞれの家に案内してもらうこととなった。
リナはザラに、ガウリイはサラに、ゼルガディスはシータに、アメリアはヴァオに、そしてはギルに。
嫌な感じを胸で感じ取りながらも、確証のない今は何もできずそれぞれ四方に歩きだした。











「初めましてー 名前はなんて言うのかな?」


明るい口調で話しかけてくるギルに、は少しだけ戸惑った。
こうして話していると、感じた嫌な感じは薄れていくから。


「……、だよ 確か……ギル、って言われてたっけ?」


「そうそう もう覚えてくれたんだー嬉しいねぇ」


呟くの言葉に、その場を明るく盛り上げようとギルは楽しげに喋った。
とても上機嫌に。
見知らぬ者を家に泊めるというのに、なぜここまで上機嫌になれるのかと疑問に思っていた。

しかし、疑問はそれだけじゃないという事には気づいていた。



なぜ……みんな同じ家に泊まらせてもらえないのかな?
部屋がないなら、みんな同じ部屋に押し込んででも構わないっていうのに……
それに……みんな、家の距離が遠い



ちらりとあたりに視線を巡らせた。
一緒に旅をする仲間、と来たときに分かるのだから考慮して近い家の者が手を上げても良かっただろう。
しかし、全員が全員バラバラの方向の家だった。


「俺の家、もうすぐだからね〜」


そういいながら、鼻歌交じりにギルは家路を急いだ。











「ありがとうございます、ザラさん」


「いいのだよ それじゃ……夕飯時に呼びに来るよ」


そう言い残し、ザラはリナにあてがった部屋から出て行った。
その瞬間、リナの部屋に突如現れた気配。


「ゼロス?」


「はい なにか、おかしい感じがしますね……ここの町は」


「やっぱり、ゼロスもそう思う?」


ベッドに腰かけ、リナは足を組んだ。


「とりあえず、全員異様な雰囲気に気づいていたみたいだから……警戒はしてくれるでしょ
 明日の朝、早くにここを出発した方がいいわね」


「ぜひ、僕もそれをお勧めします」


そう言い残すと、ゼロスは姿を消した。
ドッと緊張は取れ、リナはベッドに横になった。


「とりあえず……食事に手はつけない方がいいかもしれないわね」












「ここの部屋を好きに使ってくれて構わないからね〜」


「あ、ありがとう……ギル」


にっこりと笑みを浮かべるギルに、少し戸惑いながらもお礼を口にする


「それじゃ、夕飯が出来たら呼びに来るから、ゆっくり休んでて」


そう言い残し、ギルは部屋の扉を閉めた。
同時にはドサっとベッドに腰かけた。



なんだろう……さっき感じたのは、気のせいだったの?



感じた違和感と、ギルの態度の違いに首が傾げられた。


「考えても分からないし、何かあってから考えるとしようかな」


大きく溜め息を吐いた。
ベッドの上に手足を投げ出すように横になり、天井を見上げた。

小さな窓から、夕日の沈む光が漏れてきた。










to be continued.......................




なんだかちょっと、ヤバそうな雰囲気の話になりつつあります!
ヒロインが一番ヤバそうです。(ぁ)






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